コラム
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2012/10/11
1123    ご褒美の場所

ピアニストの上原ひろみさん。偶然ですが、テレビに出演しているところを観ました。言うまでもなく世界を猛スピードで駆け抜けているピアニストです。彼女のピアノは神業で卓越した才能を聴くことができる世代でいられることは幸せです。

番組では、現在マネージャーは不在なのでライブや公演の手配などは全て自分が行っていると話していました。全て自分でやることがリズムになっていることや、自分で全てを行うから苦労も楽しみもあるようです。自分のチケットの手配は勿論のこと、ライブで共演してくれるメンバーのチケットやホテルの手配も行っているようです。スーパースターなのに素晴らしい心掛けです。

そんな苦労があることからライブは特別な時間になっているそうです。頑張った自分へのご褒美であり、その場所に辿り着けることに幸せを感じている様子がありました。ライブは緊張する舞台ではなくて、自分が楽しめる場所だと思える力は正にプロです。その時に最高の自己表現をすることが会場に来ているファンに届けられる最高のメッセージなのです。

そんな世界の舞台で活躍している彼女のモットーは、努力、根性、気合だそうです。以外にも日本人的です。とても古臭いように思える言葉が実はどの分野にでも共通している成功の要件です。

またこんなことも言っています。「プロとして最低限のレベルというハードルは毎日きちんと練習していれば,クリアできるんですよ。でも,その日の冒険として自分が越えたいハードルというのはまた別にあって、それは自分でコントロールできないところもあるんです。地図に書いてないことを毎日探そうとしているんです。難しいですけど、だから楽しいのかなと思うんですよね。どういうふうになるのか分からないから」。

最低限の仕事をするのはプロとして当然のことなのです。それ以上に何かを付け加えることができて達成感を味わうことができる。そしてお客さんに感動を伝えることができるような気がします。期待以上のものに接する人は感動するのです。これくらいのレベルといったものを超えた演奏に接するので上原さんの音楽は素晴らしいように、相手の期待を超える仕事をすることで仕事に感動を込められるのです。

毎日練習をすることはプロとして当然のことであるように、ビジネスパーソンにとっても必要な知識や訓練を毎日行うことは当然のことなのです。それをした上で、仕事に何かを付け加えることが期待以上の仕事をするために必要なことなのです。

仕事はパソコンでするものではなくて、人と人との出会いから始まります。数字や資料ではなくて、どんな人と会ってどんな言葉を交わしたのかが大切です。毎日の訓練を行っている人は、どんな場面でも相手に何かを与える行為があります。

ピアニストなら演奏で感動を与え、ビジネスパーソンなら交渉で感動を与えます。政治に携わる者は言葉で夢と感動を与えます。演奏の場、仕事の場、そして議会の場はプロにとってはご褒美の場所なのです。いつかその場所に立てなくなる日が訪れます。当たり前のようにその場所にいられることが、幸せなのです。