コラム
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2012/10/2
1119    最終局面

2012年夏の全米オープンテニスの優勝は、アンディ・マリー選手が四大大会で初優勝を果たしました。それまでの四大大会の決勝戦で全て敗退していた同選手が、ついに壁を破りました。フルセットとなる第5セットの中でのエピソードに感動しました。次のような内容です。

「マリーはトイレでコートを離れた際に、あと1セットじゃないか。全てを出して後悔するな。戦うんだと自分に言い聞かせたという」。

結果として、試合時間は4時間54分で、記録が残る1980年以降で最長タイ記録でした。

激戦を制したのはこの強い精神力だと思います。相手に勝つのではなくて自分に勝つという意味が分かるような自分を奮い立たせる言葉です。

仕事でも何でも苦しい場面があります。そんな苦しい場面は最終局面で訪れます。最終局面に差し掛かると、そこでは決断が求められるからです。序盤は流れや定石に沿って物事が進みます。その分野においてある程度の知識と経験があれば序盤戦は乗り切れますし、差は出ません。

しかし終盤戦に入ると知識と経験だけでは乗り切れない場面が訪れます。しかも重要な仕事や発言機会であればあるほど厳しい決断が求められるのです。仕事は意思決定者の決断によって導かれますから、その結果責任が伴います。決断した者が結果責任をとるのです。

上手く行けば賞賛されますし、そうでなければ見通しの甘さや敗因を追及されます。場合によってはその地位を追われることもあります。

さて戻ります。厳しい局面で勝負を分けるのは精神力です。「もう駄目だ。早く終わってくれたら楽になる」と思ってしまうと望んでいる結果は得られません。と言うよりも望んでいる通りの結果が返ってきます。それは「早く終わって楽になる」という結果です。

それに対して全米オープン決勝戦のA・マリー選手のように「あと1セットじゃないか。全てを出して後悔するな。戦うんだ」と望むならその通りの結果が導かれます。それは全米オープン優勝という結果です。

実はもう駄目だと思うことは度々あります。もう駄目だと思った時、「あと少しだけ頑張ろう」と思うことで違う結果が得られるのです。もう駄目だと思って諦めた時は、自分が諦めた通りの結果となり、もう駄目だと思った時にもう少しだけ頑張ろうと思い直すと、それも自分が望んだ通りの結果が得られます。

つまり結果は、自分の思いが決するのです。99パーセントの場所まで来ていても、そこで諦めたら諦めると決断した1パーセントの結果がでます。99パーセントのところまで来ているのだから、あと1パーセント分頑張ろうと思ったら、100パーセントの結果が得られるのです。最後の1パーセントの違いが、全く違う結果として現実のものとなります。

勿論、最終局面で決断するためには、結果に辿り着くまでの99パーセントの過程を大切にする必要があります。99パーセントの頑張りに1パーセント加えるだけで望みは完成します。結果は最終段階における諦めるか、諦めないかの違いだけなのです。