コラム
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2012/10/3
1120    天使の香水

自分では気付いていないけれども、実に多くの人、それは知らない人も含めて支えられていると分かることがあります。

自動車を運転している時に気付きがあります。自分が優先道路を走行中、差し掛かった交差点から進入してくる自動車があったとします。運転していると「これは無理な進入だ」と分かりますから、ブレーキを踏んで減速させて交差点に近づくのです。しかし進入してきた相手の自動車は、こちらがブレーキを踏んで減速してくれていることに気付かない場合が大半です。もしこちらが減速していなければ事故になっていたことも考えられるのですが、何事もなければ、進入してきた相手は何も思わないのです。

これも知らない誰かに自分の安全を支えてもらっている一つです。決して気付くことはありませんが、言い方を変えれば、誰かに迷惑を押し付けて自分は平常を保っているのです。

人間関係やビジネスの場においても同様のことがあります。

プレゼンをした後に、「あいつのことを頼んでおくから」と一言電話を入れてくれる人がいます。相手から信頼されている人からのたった一言の挨拶が結果に対して効くことが往々にしてあります。

相談事をした際に、目の前からその案件に関るキーパーソンに電話をしてくれて、「自分の友人が困っていることがあってね。機会を設けるので相談に乗って欲しいんだけど。僕の友人だからよろしく頼むよ」と依頼してくれる人もいます。「自分の友人だから」という信頼関係を表す一言はとても効果的です。

こんなに事例もあります。ある人からの相談に対応しました。その問題解決の鍵を握っているのは東京在住のある教授でした。「一度相談に乗って欲しいんだけれど」の一言に対してその教授はこう答えてくれました。「来週だったら時間があるから会いますよ。東京は遠いと思うから新大阪まで行くのでそこで会いましょう。仕事を終えてから新幹線に乗るので、午後6時から8時の時間でどうですか。8時台の新幹線で東京に帰れるので大丈夫ですから。(笑いながら)それよりもその時間だと和歌山市まで帰れますか」と受諾の意思を返してくれました。

時間調整が大変だったと思いますが即座に対応してくれました。相談に来た相手はこのことを知りませんから、大阪にまで出張のついでがあるので会ってくれる程度に思っているだけです。教授はその人を知りませんが、依頼者からの信頼関係に基づいて新大阪まで来てくれるのです。

人はいつも誰かに助けられ、支えられ、そして迷惑を掛けながら自分の思いを実現させていくのです。そのご恩は忘れてはいけませんが、依頼するだけに慣れている人は、簡単に物事が進むので受けたご恩の大きさを感じないのです。実は一生かかっても会えない教授かも知れないのに。

しかし人の幸せに尽くしている人は相手に香水をかけているようだという話があります。

相手に香水を降り注ぐと、自分にもその香りが降り注いでいるのです。自分で香水を持っていなければ誰かから降り注いでもらった瞬間だけ香りが漂うだけです。しかし毎日のように誰かに香水を降り注いでいる人は、少しの量でも毎日自分に降りかかっているので、香りに満ちています。

誰かの幸せに尽くしている人は、自分にも幸せが訪れているのです。この自分にも降り注ぐ香水のことは、天使がくれている香水と言えそうです。