コラム
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2012/9/11
1108    腐っても鯛

「何でも本気でしないと駄目だよ」。平成24年8月に同窓会を開催した時の向陽高校の元担任の岡崎先生からの言葉です。この言葉には背景があります。岡崎先生は昭和17年生まれですから現在70歳です。私が高校3年生の当時はまだ37歳の先生でした。もっと年上に見えていたのですが、今思うととても若かったのです。

さて現在、当時の教師仲間の1/3の方が亡くなっているとお聞きしました。30年も経過すれば現役たった人が引退している時期になっていて、しかもこの世を去っている人もいるのです。信じられませんが事実です。当時習った先生方の名前が出てきて「あの先生も亡くなった」と聞くと寂しい思いがします。わずか30年のことですが生きている人は移り変わっているのです。

当時37歳の先生が70歳ですが、当時50歳だった先生の場合、現在生きているとすれば83歳になっています。現代日本人の平均年齢からすると微妙の年齢です。

現役バリバリだった当時の教師は自分の30年後のことは思ってもいなかった筈ですし、30年後には自分が存在していないとも思っていなかった筈です。それでも年月は流れて現役だった人を引退に追い込み、そして何人かをこの世から去らせています。

この事実は衝撃です。今現役バリバリだと思っている年代の人でも、30年後は引退していると思いますし、もしかしたら地球を去っているかも知れません。続けている同窓会も存在しなくなっていると思います。

現役時代はずっと続くように思っていますが、そんなことはありません。現役時代は必ずピリオドを打ちます。現役時代に毎日同じように巡ってくる日はとても貴重な日なのです。

自分で考え行動でき、そして結果を見ることができる。そんな時代は長く続くものではないのです。確かに現役時代でいられる時間は短くなっています。そう思うと、今日の日がかけがえのない日であると強く思います。何かに本気で取り組むことができる現役時代を無駄に過ごす訳にはいかないのです。

こんな話しをしてくれました。向陽高校のラグビー部監督であった岡崎先生ですが、当時の向陽高校ラグビー部は弱小でした。負け続けるラグビー部に岡崎先生が赴任して、石が落ちているグラウンドや練習風景を見て、これでは試合にも人生にも勝てないと思い、部の練習を厳しくしました。辞める部員も出ましたが「勉強ができないのであれば、せめてラグビーくらいは本気でやれ。負けっぱなしで卒業したら負けっぱなしの人生が待っているぞ。それで良いのか」と部員に話し、そこから練習態度が変わりました。グラウンドに落ちていた石はなくなり、厳しい練習に耐える部員の姿がありました。

そして和歌山県内のラグビー強豪高校である和歌山工業高校との試合で、見事勝利を収めたのです。とても向陽高校が勝てる相手ではありませんでした。それでも勝利したことで負けることに慣れている集団ではなくて、勝つことを意識した集団に変わったのです。

あれから30年も経過した平成24年夏の同窓会。「お前らはやっぱり腐っても鯛やったな」と笑顔で話してくれました。人生は長距離走です。やがて光れば良いのです。