コラム
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2012/8/31
1102    生き抜く方法

文字として残されている世界で二番目に古い法典がハムラビ法典です。アラブ世界では今でもこの法典に基づいた行動があるように思っていますし、余りにも有名な「目には目を、歯には歯を」の言葉がアラブ世界を支配しているように思っています。ところが日本では、この法文の解釈を間違っているようなのです。

小学校時代に、目を傷つけられた人はその相手の目を傷つけても良い。歯を折られた人はその相手の歯を折っても良いと教えてもらった記憶があります。つまり復讐することは正当な行為であると習ったのです。

ところがオマーン国から来た友人にその意味を解説してもらいました。この法文の解釈を聞き、復讐がエスカレートしないように歯止めを掛けるためのものだということを知りました。つまり歯を折られたら、歯を折る以上の行為をその相手にしてはならないという意味なのです。決して復讐を正当化させるものではなくて、やられたことを上限に仕返しすることまでは許すという主旨なのです。

日本人の解釈で誤った使い方をしている場合があります。このように他の国のことは、その国の人に聞かなければ分からないことが多いのです。

誤って認識している例として、イスラム社会では一夫多妻制を採用していることがあります。一夫多妻制は女性の人権を無視しているものとしてイスラム圏以外の国際社会から批判があります。しかしその根拠を聞くと騎馬民族の世界で生きていく手段として、決して頭から批判すべきものでもないような気もするのです。イスラム社会における騎馬民族間では争いが耐えませんでした。一族を率いている集団同士が戦うと当然、勝ち負けがあります。負けた方の集団は、それまで集団を率いていた強いリーダーや男性を失うことになります。残された集団に残されるのは女性だけです。砂漠などの苛酷な環境、そしてリーダー不在の集団で女性は生きていくことはできません。

そこで戦いに勝った集団が負けた集団の女性を自分の集団員として迎え入れることが普通だったのです。そうしなければ女性達は生きていけなかったからです。強いリーダーが弱い立場の人間の面倒を見ることは当たり前のこととして伝えられてきたのです。

その名残が一夫多妻制です。強い男性が弱い立場の女性を養うことが社会で必要とされていると考え、複数の女性と結婚することが認められているのです。ここで男性は責任を持たされます。男性は結婚した全ての女性を養うことを求められるのです。

女性が生きていくための責任と経済力、そしてリーダーとしての資質が認められて初めて、イスラム圏でリーダーとして生きる男性として生きていけるのです。決して女性を低く見ているという理由で、一夫多妻制を維持しているものではないのです。それぞれの世界ではそれぞれの世界が築いてきた文化、生き抜く方法があります。他の世界の住人がその歴史も知らないで批判することは歓迎すべきことではありません。

存在している全てのものや制度には意味があるのです。何も意味のないものは存在しないと考え、批判から入るよりも歴史を知った上で正しいことを導きたいものです。