コラム
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2012/9/3
1103    誇りと自信

現代日本の石油エネルギー安定の基礎を作った実在の人物の本を読みました。外資系に支配されているわが国の石油会社の中で純粋な日本系の会社があります。外国石油メジャーの力に屈しないで民族系の会社で押し通した戦いの歴史は感動的でした。現代社会に欠かせない安価で豊富な石油の可能性を見つけ、国内での供給を安定させてくれた人物がいたのです。ストーリーや作品紹介は他に譲りますが、その中で特に感動した箇所があります。

昭和41年12月の出来事を記しています。それは石油輸入用の巨大タンカーの竣工記念式典のことです。この式典に全国から15,000人の中学生を招待したのです。旅費や宿泊費は全て会社負担だったのです。招待した理由は「明日の日本を背負う少年少女たちに、日本人としての誇りと自信を持ち、未来に対して大きな夢を持ってもらいたい」という経営者の願いから実現した企画でした。

以下、その著書「海賊と呼ばれた男、下巻」から引用します。

当時、世界最大の巨大タンカーを見つめる少年少女たちの姿を嬉しそうに見た経営者は、側近の会社役員に話し掛けます。

「見たか。あの子たちの目を。瞳が輝いておる。あの子たちは21世紀の日本を支えていく子ども達だ」、「ぼくはもう21世紀を見ることはないが」。

それに対して側近は「35年後ですから、私も見ることはありません」、「どんな国になっているでしょうか」と経営者に問い返します。

「日本人が誇りと自信を持っている限り、今以上に素晴らしい国になっておる」。歓声を上げている少年少女たちを、まるで宝物を見つめようにいつまでも眺めていた。

何気ない文章ですが感動しました。昭和41年の中学生の子ども達は21世紀には48歳から51歳になり、平成24年現在においては59歳から62歳に達しています。昭和41年の子ども達は現役時代を卒業する年齢になっています。そして間違いなく21世紀を生きた子ども達なのです。その世代に続いているのが50歳に達した私達の世代です。

その経営者国岡社長が描いたような日本の姿になっているのかどうかは判断できませんが、先人が見ることのなかった明るい未来であった21世紀の世界に私たちは生きています。

繰り返します。21世紀の現在の日本は「日本人が誇りと自信を持っている限り、今以上に素晴らしい国になっておる」状況にあるのでしょうか。かつて子どもだった大人と、これからを生きる子ども達がわが国に対して誇りと自信を持つことが、これからの素晴らしい国を築いていくことになるのです。

今も昔も人の生きる道は変わりません。誇りと自信を持って生きることが幸せな人生を築いてくれますし、素晴らしい国を作り上げるのです。世界一豊かで安全、そして平和な国が日本です。先人たちが築いてくれた世界に私たちは生きています。その上に立って、今とこれからを作っているのが私たちなのです。

現代日本のリーダーを見ていると失望と諦め、誇りも自信ないように映ります。そんな姿や映像を見ることなく、せめて自分だけでも誇りと自信をもった生き方をしたいものです。