コラム
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2012/8/24
1098    代表作品

歌手の藤井フミヤさんのインタビュー記事がありました。藤井フミヤさんのソロになってからの代表的一曲といえば「TRUE LOVE」だと思います。この曲は200万枚の売り上げを記録しています。そんな藤井さんの言葉です。

「もし僕が死んだ時には、藤井フミヤはTRUE LOVEが代表曲だと書かれるだろうけれど、それはいやなことですね。それ以上の曲を作りたいと思っています」。書かれていた内容とはニュアンスは違うと思いますが、こんな感じの発言と受け取りました。

自分の代表作品は、今の時点での代表作品ではないという気持ちが表れています。今はTRUE LOVEが代表作かも知れませんが、生きている間はそれを越える作品を作りたいと思い歌手として活動しているのです。

決して代表作を作ったからもうこれで良いとは思っていないのです。この次の曲は自分の代表作に仕上げると思って創作活動をしていると思いますし、その次がそうならなかったとしても、この次こそは代表作を完成させると思っていると思います。それが人として目指すべき生き方であり、過去を越えられない自分のレベルではなくて、過去を乗り越えていく自分が自分だということを自分に言い聞かせているようです。

TRUE LOVEが藤井フミヤさんではなくて、この次の作品が藤井フミヤさんであることを目指しているように思うのです。死ぬまで代表作品を完成させるための活動を行うことを見習いたいのです。

人は誰でも今まで生きてきた中での代表作品を心の中に持っています。時間の経過と共にそれは大きな輝きを放ち続けてくれます。しかし長く生きていると自分の立場と社会の中の可能性の中で限界を見つけてしまいますから、若い時に達成した代表作品と同じその高みまで到達することは困難だと自分で決めつけてしまいます。限界は自分の心の中でつくるものであり、代表作品は自分の行動で作るものなのです。ですから心の中で限界をつくらないで、自分の代表作品をこれから作るんだという気持ちで今日を生きたいものです。

昨日までの代表作品で、自分の一生の評価を決められてしまうことは残念なことです。それを超えられないとしたら山を降りるばかりの人生になります。

2012年の夏、ロンドンオリンピックの戦いが繰り広げられています。水泳の北島康介選手は個人ではメダルに届きませんでした。しかし北島選手の戦いは素晴らしい挑戦でした。アテネと北京の自分を超えるための戦いであったのです。二大会連続二種目の金メダル獲得という代表作品を作り直すための戦いであり、他の選手との戦いと違うところが今回の挑戦だったように見えました。

結果はメダルには届きませんでしたが、選手として最後になるであろうロンドンオリンピックに挑戦したことが、代表作品を作るための戦いだったように見えます。競技選手としてロンドンに挑戦する過程、そしてロンドンの個人の戦い、そしてメドレー競技での銀メダルが今時点での代表作品になっています。チームで獲得した世界で二番目の作品は、これまでの金メダルよりも素晴らしい代表作品だと思います。そして明日になれば、また代表作品を作るための行動を起こすことだと思います。いつか「北島康介ってオリンピックの水泳で金メダルを取ったことがあるって知っていた」と言われる時が来るような気がします。違う世界で活躍して、今の代表作品とは違う一級品の作品を作り上げているような気がします。

それって可能性を追求し続ける素晴らしい人生だと思います。私たちも今までの評価で安心するのではなく、このままで安定しているのではなく、最後の瞬間まで代表作品を作り続ける人でありたいものです。