コラム
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2012/8/23
1097    信号は関係ない

「これから行こうとしている道の、信号が全て青になったら出発しようと考えていては出発できません」という言葉を聞きました。自動車を運転している状況を想像すれば、そんなことは考えてもいないし、そんな状況になることはあり得ないと思います。しかし自分の生き方を考えてみると、このような都合の良い状況が訪れてくれることを待っているのです。自分が思ったことを実行する段階になると、その実行する恐怖と上手く行かなかった場合の恐怖に心が震えてしまうことがあります。

そんな時、この台詞(に似た言葉)が頭を過ぎります。自分で自分にその決断を止めるまで囁き続けるのです。

「まだ信号は青になっていないよ。青になるまで待てば上手く行くから」。

最初は意思の力が強いのでこの囁きに反論します。

「信号が青になるのを待っていたら出発できないから、今から直ぐに出発するから黙っておいて」。

再び囁きが始まります。

「そんなことを言っても、ほらっ信号は赤だよ。その次の信号ももう直ぐ赤になるから、目の前の信号が青になっても直ぐに止まってしまうよ。少し待ってみたら」。それに対して反論する心の中の会話が続きます。そして暫くすると意思の力が弱まってきます。

「確かに今出発しても赤で止まるので、もう少し待ってみようか。今日、出発しなくても一日だけ遅れたとしても問題はないから。明日になれば出発する時の信号は青になっていると思う」と根拠のない理由をつけて、やるべきことを引き伸ばします。ブレーキを掛けようとする心の中の囁きに負けてしまうのです。

一度決断を引き伸ばすと同じ決断をすることが困難になります。最初の決断をした時よりも、これから行く道の信号が赤になっているように感じるからです。決断は信号を青にしてくれますが、意思の力が弱まると信号は赤に変わっていくものです。決断を先延ばしにした後の道路を見ると、全ての信号が赤になっています。その光景を見た自分がこう囁きます。

「やっぱり出発しなくて良かった。いま出発していたら大変な事態になっていた」。そして二度と同じ決断をすることはなくなります。このようにして可能性という機会は失われていくのです。

自分から行動を起こすという決断は意思と心に大きな力が必要となります。今から未知の領域に出発することは精神的に負担になりますから、できるなら出発したくないと思うことが囁きとなって表れます。自分で出発しようと決断しながら、やはり出発したくないという心の弱さが勝ってしまうのです。

心の中の光景は現実になるまで見ることはできませんから、見るためには強い意思力と継続する精神力が必要です。見えているものであれば信号が全て青になることはないと分かるのですが、見えていないと信号が全て青になる状況を望んでいるのです。

これから行く道の信号が全て青になる状況は決して起こりません。行く道の信号の色は関係ありません。青でも赤でも決断したら進むこと。それが意思の力であり望む結果を掴むために必要なことなのです。