コラム
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2012/7/24
1081    甲子園への道

平成24年の球児たちの夏を前にして、高校野球球児と保護者の皆さんに挨拶の機会を与えてもらいました。若い人達に伝えたメッセージに肉付けをして記します。

甲子園への道は予選から始まります。大きな舞台に立つためには予選を勝ち上がる力が必要なのです。挑戦する立場の人がいきなり本番の舞台に立たせてもらえることはありません。全て予選会を勝ち抜いて、大舞台に立つ実力があることを見せ付けて初めて認められるのです。甲子園に向かう道程と同じことが大人の社会でも繰り広げられています。

予選を戦うのではなくて、甲子園を目指した戦いが始まることを自覚しておいて下さい。

今年はロンドンオリンピックの年です。和歌山県からオリンピック出場を決めたのがレスリングの湯元兄弟です。アスリートにとって、オリンピックを目指す戦いは一生に一度か二度のチャンスがあるだけです。生涯でたった一度のチャンスを目指して長く厳しい練習を続けています。皆さんも同じです。夏の甲子園出場のチャンスは3回だけです。人生でたった3回だけの挑戦ですから、残された期間、後悔のない練習を続けて下さい。そして一勝を目指していては駄目です。二勝、三勝と積み重ねていき、やはり甲子園を目標にした戦いをすること。それが三年間、実質二年間の集大成となります。

さて保護者の皆さん、おめでとうございます。恐らく小さい頃から野球少年だったお子様が、自分の夢に向かって挑戦している姿を観るのは幸せなことだと思います。今までのご苦労が夢に向かっている姿の中に溶け込んでいると思います。最後まで頑張りましょう。

保護者、学校が一体となって応援したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

そして三年生に一つだけ話をします。高校三年間、実質二年間ですが、野球に打ち込んできたことは素晴らしいことです。三年生は、もう大人になる時がそこまで来ていますので、大切な話を是非とも伝えておきます。高校野球では甲子園という目標がありますから、二年間練習にも耐えられたと思います。

ところで大人になると目の前には無限の時間が与えられるような気になります。自分のやりたいことは10年先でも20年先でも、何時でも思った時に実現できると思います。

私もそうですが、実際は思いを実現させることは難しいのです。そうしている間に年月は経過して行きます。何も達成できないでいることになります。何故、そうなるのでしょうか。それはたくさんの時間が与えられていると錯覚をしてしまい、期限を区切った目標を持たないからです。高校野球で学んだ二年間に集中して練習を行う姿勢、これは人生の財産です。大人になっても無限の時間の中に浸ってしまうのではなくて、目標を立てて、まず二年間やり続けること。そしてまた二年間やり続けること。これが大切なことなのです。高校野球で身に付けた夢を達成する公式を忘れないで、いつか悩んだ時に二年間で区切った目標を持つことを思い出して下さい。

三年生にとっては最後の夏です。人生の中で甲子園に挑戦できる季節は二度と訪れません。実は人生は二度とない舞台の連続ですが、大人になると気づかないのです。同じ季節が毎年巡っているので、今年できなかったことでも来年はできると錯覚してしまうのです。

でも目標を持って一人で練習を続けなければ来年も今年と同じように、何も達成できないままで過ぎていくのです。甲子園を目指す挑戦は3回だけ。人生の挑戦は人生が80歳だとすれば名目で80回あります。実質でも20歳から80歳までの60回挑戦できる季節があります。この挑戦可能な数の多さに有限性を感じないのです。しかし人生は無限ではなくて有限です。人生で挑戦できる機会は限られています。甲子園に挑戦した気持ちで人生に挑戦してください。有限の中で可能性を達成させようと思う気持ちがあれば、人生の勝者になれます。