コラム
コラム
2012/5/25
1043    新しい教科書

尊敬する落合先生が15年ぶりに本を出版しました。「金融ワンワールド」がそれですが、比較的難解な内容になっています。内容が難解なのは理由があるのですが、先生に「今回の本も難しい内容になっていますね」と話したところ次のような答えが返ってきました。

「難解だから読んだら良いのですよ。新学年になって新しい教科書をもらったところ内容が簡単で理解できるものだとしたら、その教科書を勉強する気になりますか。分からないから勉強する気になるでしょう」と答えてくれました。

この答えは落合先生らしいものですし、全くその通りです。難しい内容なので理解しようと本を深く読もうとするのです。それでも分からなかった場合は、今だったらインターネットで詳細を調べることもできますし、今回の場合であれば著者に聞くことも可能なのです。初めて知る事実や歴史的背景を理解することで、書かれている内容が分かり始めます。今まで知らなかったことを知ることは自分の力になりますし、考え方の幅が広がることは間違いありません。

つまり難解だからと思ってそれを避ける行為は良くないのです。難解なものは読むだけでも大変ですが、著者が伝えようとしてくれているものがあるのです。今回のように身近なところにいる著者の本に巡り合えたのは、今の時期にその内容を理解することが将来役立つことだという啓示だと思いたいものです。

難解だと思うのは、その分野の知識が不足しているからです。知識が不足しているのであれば、そこから学ぶ姿勢を持つべきなのです。本でもこれから出合う事象でも同じことが言えます。簡単に答えが分かるようなものであれば、そこから学ぶ必要はありません。しかし難解な事象に遭遇した時は、それを解決する方法を考え行動に移そうとします。その姿勢が大事なことなのです。

初めての教科書を学ぶように、社会の中の出来事も一つずつ学び解を導くことで応用力が身に付いていくのです。最初から分かり切ったことばかりが周囲の出来事ではありません。むしろ難解な出来事ばかり発生するのが人生です。そんな困難に出会った時は、初めて配布された教科書をめくっていると感じます。しかしその学年が終わる頃には、教科書の内容を理解しています。先生に授業で教えてもらう、復習して理解を深める、試験前には勉強をして知識の定着と理解度を深めることによって教科書の内容を自分のモノにしていくのです。難解だった教科書も一年経てば理解できるようになっています。一年経ってから、その教科書を最初から読んだ場合、難解だとは思わなくなっています。その分、成長しているのです 。

人生で難解な事情に出会った時は、新しい教科書を配布してくれたと思いましょう。それを学び、解を見つける過程で自分の知識と経験が増えるのです。分からないからそれを克服する過程が結果として楽しいことなのです。分かりきった教科書は学ぶ気になりません。人生の中で配布され続ける新しい教科書の内容を楽しみにしたいものです。難解なものほど内容を理解できると人生に役立つものになります。