コラム
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2012/5/11
1034    不易流行

世の中、守るべきものと変えなくてはならないものがあります。どちらに偏っても社会は前進しません。守るべきものとは価値観です。日本という国家にあって基本的なこと、国家観は守るべきものです。国家観を持つことが国を守ることです。第二次世界大戦で日本が敗戦国になった時、米国は日本の天皇制度を解体しようとしました。ところが天皇を頂とする国家観を確立していた当時の日本人は凛としていて、敗戦にあってもこの国を守り通すという気概を持ち合わせていたのです。米国はこの国家観を畏怖し、天皇制度をなくしてこの国を統治できないと考えたのです。国家観は国家を維持し守ることにつながることが分かります。それぞれの国家が持っている、それぞれの歴史に基づいた国家観は守るべきものなのです。

そして社会の進展に応じて変えるべきものは個人の価値観なのです。個人の価値観は普遍ではありません。10年前に成功体験を持ち確立させた価値観であっても、今の時代に通用するものとは限りません。不変的な価値であればどんな時代でも通用しますが、社会の常識や企業の発展という価値観は常に変化していくものです。10年前の価値観を守り通しても企業を継続的に発展させるとこはできないのです。

成功体験は減価償却されていきます。イメージとして、その当時の成功体験は1年後には10パーセント償却され、10年後にはゼロになります。つまり10年前の個人の価値観は現在においては通用しないと思うべきです。個人が10という価値観を持っているとしたら、毎年一つの価値観を入れ替えていく内面の作業が必要となります。時代に即応した新しい価値を取り入れ、自分の持っている価値観に組み込む作業が必要です。毎年一つの価値観が償却されていくと考えたら、新しい資産、この場合は価値観を一つ取り入れる必要があります。10の価値が9になったとしても、新しい価値観を一つ取り入れたら、その時は再び10の価値観を有することができます。

このように社会から学び、人から学び常に社会に適応する価値観を持っておくことが大切なことです。

個人レベルの価値観で不変的な価値観はないと思います。個人で持っておく価値観は、挨拶をする、両親を初めとする人生の先輩を敬う、人には親切にするなど、人間が生きていく上で守るべきものです。そんな人間として生きていく上での普遍的な価値観以外は、常に変化に曝されていると思うべきです。

そんな価値観を表す言葉に不易流行という概念があります。不易とはどんな場合も変わらないことです。どれだけ社会が変化しても絶対に変わらないもの、或いは変えてはいけないものを言い、それは不変の真理を意味しています。それに対して流行は変わるものであり、社会や状況の変化に応じて変えていくべきものを現しています。

人として大事なものは国家観や、人間として持ち合わせておくべき礼儀に代表される普遍的な価値観と、社会の変化に対応するために学ぶことを通じて得られる変化に対応する力なのです。どちらも正しい学びから得られるものです。