コラム
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2012/5/10
1033    揺るがない信念

実業家のY社長の言葉は真剣さに溢れています。新しい事業に着手しようとしている時期にその構想を聞いて、つい「それは大変なことですね。できそうですか」とつまらない意見を言ってしまいました。

即座に、「私はできている結果が見えていますよ。できると思うからできるのです。難しいと思うと難しい経過に邪魔をされ結果はでません」と話してくれました。その通りなのです。できると思うことで、それはできるのです。頭で分かっていても、実際に直面すると躊躇することや先が見えないので戸惑うことがあります。傍観者でいる時は「できる思うことが大切だ」と簡単に言えますが、当事者になると「できると思うこと、本当にできると思うこと」が難しく感じます。

こんな事例が判りやすいと思います。ゴルフでコースが簡単に読める50センチメートルのパットを打つ時、上手く沈めることができます。ボールからカップまでの距離は短く見えるからです。

ところが1億円の賞金が懸かっていて、このパットを沈めると優勝という場面に自分がいるとします。最終ホールですからギャラリーはこのコースで自分一人だけを注目しています。そして世界中にテレビ中継されています。そして初優勝がかかる場面だったとします。どれだけのプレッシャーの中でのワンプレイになるのでしょうか。緊張の余り金縛りにあってしまうかも知れません。そしてカップまでの50センチメートルの距離は、これまでに見たこともない遠い距離に感じます。たった50センチが5メートル以上にも見えるのです。この場面で「大丈夫。必ず入る」と思うことは容易ではありません。

もうひとつの事例です。幅30センチメートルで5メートルの道を踏み外さずに歩くことは簡単です。ところが高層ビルの屋上と高層ビルの屋上と間に幅30センチメートルの板を敷いて、そこを隣の高層のビルまでの5メートルの距離を歩くことは簡単なことではありません。足がすくんでしまって渡り始めることができなくなります。同じ道路幅なのに地面の上を歩くのと、高層ビルの高さのところを歩くのでは精神状態が違うので、歩けなくなるのです。

このように、どんな場面でも「できると思う」ことは簡単ではないのです。簡単に思うためには数多くの経験を積んでいること、支援してくれる人が大勢いることが条件です。

Y社長はこれまで数多くの経験を積み、信頼できる人に支えられています。絶対にできるという自信に溢れています。絶対にできると強く信じているから新しい事業を始められるのです。もうY社長の中では新規事業の成功が見えています。この春に着手して、同年の秋にはもう報酬が入っている場面ができ上がっているのです。しかもお客さんの一日辺りの来店者数、具体的な売上額がイメージできているのです。

未実施の場面ですが、もう完成形がしっかりと描かれているのです。事業の完成形が頭の中にあることから協力者と事業所の場所、必要な投資額などが決っているのです。既に決っていることを実行するだけです。これだけの信念があるので結果が揺るがないのです。