841. 伝説のスピーチ

アップルコンピューターの創業者であるスティーブ・ジョブス氏。勿論、お会いしたことも話したこともありませんが、アメリカのある大学の卒業式でのスピーチが伝説になっています。スピーチの柱は3つありますが、三番目の死を意識することの大切さについて触れたいところです。
 私たちは日頃、死について考えることはありません。働いていると生や死を意識することは滅多にありません。ジョブス氏もそんな一人でしたが、すい臓癌と診断されてからの死生観に変化があったようです。「後3ヶ月から6ヶ月の生命です」と告げられたジョブス氏は、生きている時の整理に取り掛かろうとします。そんな時に奇跡が起きたのです。すい臓癌は手術が難しいとされているのですが、ジョブス氏のすい臓癌は手術が可能なものだったのです。

 即刻手術を行い、現在も以前にも増して今を生きています。そんな氏が33年間、毎朝、鏡の自分に向かって投げかけている言葉があります。それがスピーチの中に出てきます。

「今日すべき仕事は、今日自分がやりたい仕事なのか」という自分に向かっての問い掛けです。そして、今日しなくても良い仕事だったり、したいと思わない仕事だと思うような自分からの回答が続いたら、仕事や環境を変えなければならないのです。

 私たちは明日生きられるかどうかさえ分かりません。多分、明日も生きているだろうという、今日の延長線上に人生が続くという前提の下で、根拠のない希望を持って眠りに就き、そして朝を迎えているのです。

 今日も生きていることを実感しながら起きる人よりも、今日も会社に行かなければならないのかという義務感で起きる人が多いと思いますが、義務感で起きるよりも、今日を迎えられた生命感に溢れる起き方をしたいものです。

 もしかしたら、今日が人生で一番最後の日かも知れないのですから。

 人生で最後の日に何をしたいと思うのか。自分に問い掛けてみても回答は見つけられないものです。今日することは、将来に向かっての土台を築く一日である場合が多いからです。一日で完結するような仕事をしていない場合が多いことから、人生最後の日の過ごし方が分からないのです。

 それでも確実に人生最後の一日は訪れます。家族と暮らしているのか。病床で携帯電話を握りながら仕事をしているのか。それとも自動車を運転していて突然意識がなくなるのか分かりませんが、最後の日に何を思うのでしょうか。

 やりたいことを実現できなかったことを悔いることが多いと聞くことがあります。最後の一日でできることは限られています。かつ人生最後の一日が訪れることは決定事項であることを意識しながら、毎朝、自分に問い掛けたいものです。

「今日は人生で与えられた最後の一日です。自分で好きなことができる環境が整えられています。私は何をするのでしょうか」。

 これをして終わりたい。それを見つけたいものです。


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