831. トイストーリー

トイストーリー三部作の最終章がトイストーリー3です。主人公が大学生になることからお別れの運命になるおもちゃたち。子どもの頃のように一緒に遊んでくれなくなって数年が経ち、そして別れの時か訪れます。子どもとおもちゃの別れを描いていますが、私たちの人生の出会いと別れの時の教訓を教えてくれているようでした。

 子どもの頃に遊んだおもちゃは、今では手元に何一つありませんが、もし残っていたとしたら、どれだけ子どもの頃の気持ちに戻れるのでしょうか。何を思っていたのか、このおもちゃといた頃の夢は何だったのかさえ、思い出せるはずです。

 一緒に大きくなれなかった、かつて存在していたおもちゃ達のことを思い出しました。


いつまでも一緒にいられるものは存在していません。誰であっても、そして本人でさえ、いつかこの世から去る時が訪れますから、地球上で生命を受けた存在である限り、別れはつきものです。

「子どもはいつか大人になる」。そんな謳い文句ですが、そんな大人もいつまでもこの場所にいないものです。行き違いやほんの少しのすれ違いで別れてしまった人もいますが、気持ちだけは持っておきたいものです。


 それにしてもトイストーリー3は、子どもの頃を取り戻させてくれますし、子どもから大人になる頃の心の変化を思い出させてくれます。キラキラ輝いていた宝物でも、身体が大きくなるに連れて、宝物が何の価値も感じない存在になっていきます。大切なおもちゃやヒーローのカード、サインボールや絵本など、多くのものが失われていきました。あれだけ大切だったものが、どうしてゴミのような扱いになってしまったのでしょうか。子どもが成長して、興味の対象が移ってしまうからです。

 おもちゃからカードに、そしてグローブやサインボールへと関心は移り、そしてレコードや楽器、テニス、スキーなどへと変化していきます。大切にしていたCD、ビデオなどもやがて、不要なものへと変化していきます。形は変わらないのに宝物が宝物でなくなるのは、心が変わるからです。

 仕方ないことかも知れませんが、心の変化と共に子どもの頃の心が失われるのは残念なことです。子どもの頃に描いた夢や希望、そして純粋な心はいつまでも失うことなく持ち続けたい宝物です。


 おもちゃの姿をして、私たちに人生の宝物を贈ってくれるのがトイストーリー3です。もう私の子どもの頃に遊んだおもちゃはこの世に存在していませんが、成長を支えてくれた存在であったと思います。一緒に遊んだおもちゃは、子どもを育ててくれているのです。

 大人になった今、自分のために尽くして、そして消えてしまった多くの存在に感謝したくなります。もし、子どもの頃に遊ぶおもちゃがなかったら、読むべき絵本がなかったら、そして聴くべきレコードがなかったら、今のような心を持った自分は存在していません。

 遊ぶ楽しみと共に、心を育んでくれた全ての存在に感謝しています。私たち大人も、子どもにとっては、やがて記憶の中の存在になっていきます。いつまでも見守ることができなくても、心の成長に欠かせない役割を果たしたいものです。子どもを育んでくれたおもちゃに負けないように。


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