ある日の朝、いつもお世話になっている方から四戒について教えてもらいました。
四戒とは、中国宋の時代のお坊さんの法寅がその弟子に伝えたものです。名の通り、人が注意しておくべき四つの戒めを教えてくれます。
ひとつ「勢い使い尽くすべからず。勢い、もし使い尽くさば禍必ず至る」。
勢いのある時は自信に溢れていますが、そんな中にこそ躓く種が潜んでいます。勢いを自分で感じている時は、何でも一人でできるように思うものですが、世の中のことでそんなことはあり得ません。勢いのある時ほど、周囲の人への気配りを大切にしたいものです。
勢いが失速し始めると、うまく行かなくなる場合があるので、加速に加速を重ねることに注意をしたいものです。
ふたつ「福、受け尽くすべからず。福、もし受け尽くさば、縁必ず孤なり」。
恵まれた環境を良しとして楽しむことばかりに耽ってしまうと、やがて孤立することになります。福は独り占めしないで、仲間のみんなに分け与えるべきものなのです。そうすると、また誰かが福を呼び込んでくれるものなのです。
また、福を独り占めすることは循環を途絶えさすことになりますから、やがて自分のところにも福は巡って来なくなります。福を持っていたとしても、新しい福が巡って来ないと、ツキをなくしてしまいそうです。福は分け与えるものなのです。笑って福を旅立たせると、福は笑って仲間を連れて戻ってきてくれます。
みっつ「好語、説き尽くすべからず。好語もし説き尽くさば、人必ずこれを易んず」。
どれだけ素晴らしい話であっても、長い時間それを聞かされ続けるならば、それを素晴らしい言葉だと思わなくなります。相手に話をする時は、例えこちらが目上であっても、相手の立場に立って話をすべきです。素晴らしい話であっても長時間、聞かされたとしたら、自分の時間が無駄に終わったと思われることもあります。
よっつ「規矩行い尽くすべからず。規矩、もし行い尽くさば、人必ずこれ繁とす」。
規則を守ることばかり言っていると、それを聞いている人は言うことを聞かなくなってしまうものです。規則は守るためにありますが、法律であっても、少しは解釈する余地は残されています。規則を盾にとって出来ない理由を述べ続ける人がいますが、やがて誰も相談に行かなくなってしまいます。人は規則によって動くものではないからです。人は情によって動くものなのです。
人は、人生の先輩が社会で、そして先人の教えから学んだことを受け取ることで、気づくことがあります。登り坂にある時は一所懸命ですし、上りきろうとする気概を持つことは必要です。そんな中にあって歴史に耐えて残ってきた教訓を学び、立ち止まって今を考えたいものです。高僧をして四戒ですから、私たちはもっとたくさんの戒めを学び取る必要がありそうです。