716. たまたまの環境
 輝きを持って活躍している人を見ると、遠い世界でいる人のように思います。手が届かない錯覚に陥ることがあります。
 しかしそれはその人がたまたまの環境に恵まれたからだとも言えます。例えば、和歌山県でいると東京の大学は遠い存在ですからイメージすることは困難です。イメージするためには実際にその場所に行ってみることや、卒業生から話を聞くことに頼らざるを得ません。東京都内で生活していると、小さい頃から名門大学でも身近な存在ですから自分の大学生活がイメージできます。その差がたまたまの環境の差なのです。

 ビジネスでも同じです。ボストンコンサルティングループと接点のない人が、その会社が何をしているのかは分かりません。イメージすら出来ないと思います。イメージできないことは実現させることは困難なのです。実現させるためには、何の行動を起こせば良いのか全く分からないからです。ですから雲の上の存在として捉えることになります。
 ところがボストンコンサルティンググループで働いている人にとって、仕事内容や目指しているところは明確です。会社内の人にとって決して雲の上の会社ではなくて、自分の生活圏の環境の中に存在しているのです。

 知らない世界のことは体験していない世界なので、何が起きているのか全く分からないのです。私もたまたま議員をさせてもらっていますが、会社勤めだけの時と比較すると、得られる情報の質や量は全く違います。会社勤めの時には得られなかった情報はありますし、会社勤めの時に聞いたとしても、信じなかった情報もあります。
 ところが今までと違う環境で活動していることから、それまでなら異質の情報や案件に遭遇しても、信ぴょう性を持った情報として処理することができるのです。世界か違うと得られる情報は違いますし、情報が違うと行動が違って行きます。
 かなりの確率で確かな情報に基づいて行動する場合は、大胆に、自信を持つことができますが、不確かな情報に基づく行動を起こすことはできません。そして同じ情報であっても、裏付けを取れる情報と又聞きで根拠がはっきりしていない情報とでは、その後の行動は違ってきます。

 これも、たまたまの環境によるものです。ですから和歌山県にいたら決断できないことでも、東京から見ると「そんな簡単なことにも踏み出せないの」と思うかもしれませんし、逆の場合もあります。人は自分が置かれた環境の中で物事を考えています。環境の外の情報は得られませんから踏み出すことに不安です。不安な状態の中で、行動することは大変なことですが、確かな情報に基づいて行動することは比較的簡単です。

 人はたまたま与えられた環境の中で考え、判断し、行動しています。スーパーマンに見える人でも、その人に与えられた環境の中においては普通のことかも知れません。ですから、たまたまの環境の領域を増やしていくことで、安全に活動できる範囲が広がっていくのです。

コラム トップページに戻る

前のコラムへ   /  次のコラムへ