692. 強く打つ
 元日本航空の国際線客室乗務員の黒木安馬さんが機内でタイガー・ウッズ選手に出会った時の話です。黒木さんがタイガー・ウッズ選手のトーナメントビデオを見て、必ずカップを越すような強いパットを打っていることに気付いたそうです。そのことについて質問したそうです。

「ずいぶん強くパットを打つんですね」。

タイガー・ウッズ選手は「カップに届かない球は絶対に入らない」と答えたそうです。
 極めてシンプルですが人生の鉄則です。カップに届かない球は絶対に入らない、どんなことにも当てはまります。日常の場においても、思い切りが悪くてあと一歩届かないことがあります。あと少し勉強していたら。あと少し頑張っていたら。あと少し走っていたら、など思うことがあります。あと少しの差がその後、大きな差になることがあるのです。

 ゴルフとでいと、メジャー大会での予選通過と予選落ちとでは大きな差です。資格試験や入学試験でいうと、一点の差で合格と不合格とに分かれます。サッカーや野球の場合はもっと顕著です。一点の差で勝敗が分かれるからです。

 このように少しの差が大きな違いになりますが、その少しの差とは思い切りに左右される場合があるのです。大切な場面に遭遇すると大事に取り組もうと思ってしまいます。勝負に関係のない場面では、思い切り良く立ち向かえますが、大事な一戦や大事なプレゼンテーションなどでは、緊張感が違いますから、気持ちが大切に大切にと向かいます。その結果、ゴルフでいうところのカップ手前で球が止まってしまうことになるのです。

 目指すゴールを手前に速度を落としては駄目なのです。ゴールの向こう側にもう一つのゴールを想定して走り抜けなければなりません。資格試験で合格ラインの70点を目指していては合格点に届きません。ボクシングでは相手を突き抜けるほどのパンチを打たなくては効果がありません。相手のボディで止まってしまうような打ち方ではダメージを与えることはできないのです。野球のピッチャーはホームベースを目標にしていてはボールに勢いをつけることは出来ません。ホームベースの先を目掛けて投げ込むから、バッターにとって勢いのあるボールになるのです。

 仕事の場合でも全く同じです。100の成果を出すためには知識と準備は倍の200くらいの状態にしておかなければ、本番で100の力を出せないのです。人前で話をする場合も同じです。100の話を伝えようとすれば、最低200の手持ちネタが欲しいところです。一つの事例を理解してもらうには複数の具体例が必要です。具体例を話そうとすれば、自らが現場に行って関係者と話した経験が欲しいところです。新聞やテレビネタだけでは、どうしようもありません。関係者でない限り、報道された内容の裏側や放送でカットされた部分が分からないので、人に伝えようとしても伝えきれないのです。

 どんな場合でもゴール手前で失速するようでは、結果を出すことは難しいのです。あくまでも突き抜ける感覚を持っておきたいものです。

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