お三味線は日本の伝統芸能ですから、技術を習得することは容易ではありません。お師匠さんに聞いたところ、早くて3年はかかるそうです。それでもいまの人は3年もお稽古に来てくれませんから、1年で何らかの舞台に立てるようにお稽古を行っています。そうしないとお弟子さんは厳しいお稽古を3年も続けられないからです。さらにお三味線を正しく、しっかりと演奏する形で持つことだけでも三ヶ月はかかるようですから、大変な忍耐力を要します。続けることの大変さが分かりますし、続けることだけが実力を向上させる方法であることが分かります。続けること以外に実力を高める方法はないのです。
平成21年の新春の演奏会で演奏したお弟子さんの中には、習い始めて2年目の人もいました。早く舞台を踏むことで励みになり、緊張感を持ってお稽古に臨むことができるからです。お稽古だけでは身につかないことでも、演奏する舞台が決まっていると恥をかきたくありませんから、気を入れてお稽古をしますし、自宅でも練習する姿勢になります。
和歌山県田辺市にある吹奏楽の強豪校では、新人であっても本番の経験を積ませているそうでする。高校の文化祭だけではなく、福祉施設への慰問演奏や幼稚園などへの演奏会など実践の機会を多く作っています。実践の機会が多いと成長が早いからです。実践に向けて気の入った練習と、人前で恥をかきたくないという心理が働くからです。
誰にも見られない練習を続けるよりも一ヶ月に一度でも舞台や人に見られる実践の機会を設定した方が実力は向上するのです。
このお三味線教室でも同じ考え方に基づいたお稽古を行っています。大きな舞台を組むことは難しくても、慰問活動や何かの会合前段で演奏を行う活動を続けています。お弟子さんにとっては、小さな舞台でも心理的には大きな舞台ですから、恥はかきたくありません。その目標に向かってお稽古を重ねることを繰り返して、3年で学ぶことを1年で仕上げるようにしているのです。
ただ本来は譜面を見ないで演奏するのが通常だそうですが、譜面を覚えることをしていては実践までは辿り着きませんから、そこは譜面を見て演奏するように工夫をしています。苦しいことを緩和させて楽しいことに焦点を向けることも上達の秘訣です。プロでない限り、苦しいことよりも楽しいことの方が長続きするものです。
ところで上手になるためには基礎体力が大切な要素だそうです。体幹がしっかりしていると上達が早いようです。これはスポーツと同じです。まずお稽古を続けられる基礎体力があって技術があります。
何事も基本を疎かにして技術や学力の向上はありません。基礎を確立させて次に進みたいものです。
お稽古に関する素敵なお話でした。
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