636.おもてなし
 おもてなしの気持ちは挨拶から始まります。「こんにちは」「いらっしゃいませ」の言葉が最初の言葉ですが、誰に向かって挨拶するのか決めておかないと誰にも届きません。言葉のベクトルを伝えたい相手に向かって放ちます。イメージとしては、言葉のベクトルを伝えようとする相手の顔を突き抜けるような強さで言葉を放つのです。確実に相手に言葉と気持ちは届きます。言葉の力を信じて下さい。

 そしておもてなしの気持ちはそんなに難しいものではありません。取り繕ってもVIP相手だとばれてしまいますから、普段の、ありのままの自分で接することが大切です。普段と違う自分で接したとしても自分も楽しくありませんし、相手も楽しくない筈です。自分が楽しんで接客するためには、いつもの自分である必要があります。おもてなしにマニュアルはありません。当然のことです。一人ひとりの性格に応じておもてなしの表現は違うからです。

 おもなしとは、自分の価値感を信じて相手に伝えることです。もしてテーブルに飾られている花の葉が枯れていたら、その葉っぱをちぎって見栄えが良いものにすることもおもいなしです。テーブルに水が零れていた場合、そこを綺麗にしたいと思ったら拭き取ることも自分の価値観ですし、何とも思わないとしたら、そのままにしておくのも自分の価値観です。花がきれいでお客さんに見て食事をしてもらいたいと思ったら、花の向きをお客さんが見やすい方向に置き換えることや、グラスの水が半分位になっているのを見て、そのグラスを新しいものに取り換えたいと思うことも価値観です。

 普段、その様な事態に遭遇した時にどう思うかを基準にすべきです。ファーストフード店だとマニュアルがありますからそれに従うと良いのですが、VIPの接客の場合、決められた形通りの接客ではなく、自分の価値観を表に出すことが最も重要です。価値感を表現することがおもてなしであり、相手の気付かない心配りが相手を感動させるのです。期待しているようなサービスを提供しても想定内ですから、それほど効果的とは言えません。思っている以上の発見や驚きを提供した時に相手の満足感を満たしてくれます。

 心配することはありません。日本のサービスレベルは間違いなく世界一です。日本のサービスとは私達が普段接しているサービスのことですから、そのサービスを外国からのお客さんに提供することは決して難しいものではありません。
 自分の価値観を信じて、自分が楽しもうとする気持ちを持って接して下さい。自分の価値観を表現することは世界で同じものがないサービスです。それが私のサービスであり、和歌山県としてのおもてなしになるのです。

 現代はサービス業の時代です。サービスレベルの高い人は就職する時には有利になりますから、一流の人が集まる今日の機会を大切にして下さい。自分が出来るおもてなしが最高のおもてなしだと自信を持ってVIPとの接点を楽しんで下さい。
 そして会話をする機会を持って下さい。VIPの方と話をする機会はそれほど多くありません。話をすることが勉強になりますから、是非、退屈そうにしているお客さんがいたら見つけて話し掛けて見てください。お手伝いに来ている観光学部の学生が話し掛けてきて嫌がる人はいないと思います。
 和歌山大学観光学部の学生さんへの講義でした。

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