企業や組織は遊軍の重要性を認識していない場合が多いこと。成果主義導入後の企業では個人に成果目標を与えていますから、具体的な数値を求めるようになっています。例えば年度の上期と下期のそれぞれの販売目標などの結果系の指標と、顧客リストに基づく訪問回数などのプロセス系の指標などが示されるため、日常業務に余裕がなくなっています。余裕がないとは、良い意味での遊びの部分がなくなることを示していますから、短期的に数値をあげるための仕事が全てになります。ですから社外人との情報交換や、ちょっと近くまで来たので立ち寄ろうとする姿勢がなくなって行くのです。
その結果、企業では全て役割の決まった陣容となり遊軍が存在しなくなります。企業にとって具体的数値目標を与えにくい遊軍は、どうしても配置する部門がなくなってしまうのです。平時や平穏な日常においては遊軍の存在価値は分かりません。しかし企業において毎日が平時ばかりではないのです。従業員が交通事故を起こしたりトラブルに巻き込まれたりすることがあります。取引先との関係が拗れて、以降の商談が進まなくなることもあります。
こんな場合、社外人と人脈を形成している遊軍の人がいると上手くトラブルを回避したり解決させることが可能です。人の世の中は思っている通りに、または全て形式通りに進むものではありません。人が関係する仕事においてイレギュラーはつきものと考える方が正解です。
野球に例えると、ピンチの際に最少失点で踏み留める役割を果たしてくれるのが遊軍なのです。満塁のピンチに登場する肩の強いライト。リリーフ投手などの役割を果たしてくれるのが遊軍なのです。人生は先発完投ばかりではなく、多くの場合は人の助けが必要です。相手に数多く勝つためには、守備においては守備能力の優れた選手、セットアッパーやクローザーの存在が不可欠です。攻撃においては得点機におけるバントの得意な選手や勝負強い選手や代走の役割を担ってくれる選手の存在が不可欠です。
スターティングメンバーの9人だけで固定するだけでは一試合だけなら勝てるかも知れませんが、長期戦においては勝ち続けることはできません。人生は間違いなく長期戦です。先発の選手だけで勝ち続けることはあり得ません。もっと言えば、先の試合を優位に進めるためのスコアラーの存在や長期的に勝てるチームを築くためのスカウトの存在は欠かせません。直接の勝負に関わっていないと思われる遊軍が、組織にとっては絶対に必要なのです。
成果主義の企業においては遊軍の居場所がなくなりつつあります。しかし一見不必要に思える遊軍の存在意義は、組織がピンチに陥ったりチャンスを掴んだ時に力を発揮します。
正攻法の固定メンバーだけではピンチを解決させることはできても、長期化するか不利な解決を余儀なくされます。固定メンバーだけだったら、チャンス到来の時にプレッシャーに弱い選手に出番が回ってきたとしたら良い結果は期待できません。
遊軍の有難さと力を企業は知っておくべきなのです。
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