626.ルール
 中学生に「たばこを吸うのは格好良いと思いますか」と尋ねたところ、「格好悪いと思います」と答える生徒がいました。この生徒は絶対に真っ直ぐ伸びるので大丈夫ですと生徒指導の経験豊かな先生が話してくれました。

 学校のルール、社会のルールを守れることが素直で伸びる人間の証明です。社会では未成年はたばこを吸ってはいけないことになっていますし、学校のルールも同じです。ルールを守れない人に限って「たばこを吸って何故悪いのですか」と反論することがありますが、全く話になりません。悪いのか悪くないのかの問題にもなりません。社会のルールは守るのが当たり前のことで、それがルールなのです。ルールを守ることもできない人が文句を言っても、誰も相手にしてくれません。

 続いて、「勉強をしないで、ぶらぶらしていることは格好良いと思いますか」との問いに対しても、「格好悪いと思います」と答えてくれました。これも良識のある答えです。
 逸脱し始めている生徒は、「たばこを吸うのは格好良いと思いますか」の問いに対して、「格好良い」と答えますし、「勉強をしないで、ぶらぶらしていることは格好良いと思いますか」との問いに対しては、「勉強しなくても良い」と答えることになります。
 心のあり方が態度に表れるのです。悪いことは格好良くないと思える感覚は、実は大切なのです。

 中学生に対してたばこ勉強の問題であれば白か黒かは分かりやすいのですが、社会人になると良いことか悪いことか分かり難い事例にたくさん遭遇します。応用問題のような事例に遭遇すると、解を解かなければなりません。難解な事例であっても、基本は正しい社会のルールを感じ取れる力です。この感覚を持ち合わせていないと判断を誤ることになります。

 同じ会社の内の出来事のように、ある一定のレベルにいる同質の人の集団であれば、判断することはそれほど難しくありません。同じような価値観を共有していることと、進むべきお互いに方向が分かっているからです。

 ところが会社の外部の人との仕事になると状況は全く違ってきます。価値感は違う、置かれた境遇も違う、目指すべきゴールも違うのですから、望む結果を得るためには騙し騙されの世界になります。従来のように人を信じることから入ると思わぬ結果を招くことがありますから、相当注意が必要です。基本的に東証への上場会社であればコンプライアンス順守は絶対の価値観ですし、信頼関係に基づいて仕事を進めます。しかし社会には180度考え方の違った会社も存在することも事実です。コンプライアンス違反は当然のこと、残念ながら利益を得るためには手段を選ばない人もいます。人を騙すことから入る人もいますから、無防備に信じることは危険が伴う場合があります。
 このように今までの価値観が通用しないような、価値観の違う相手との仕事は難しいのです。その場合、社会的に正しいことなのか、社会人として格好良いことなのか、人間としてのルールを外れていないのか、などが最終判断のための価値観となります。

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