大なり小なり人は仕事に関わっていますが、全て共通する項目と考え方があります。それは簡単なことで、仕事の仕上げは決算だということです。決算をして初めて仕事が終わることになります。
ずっと以前に、当時の上司から言われたことを思い出しました。「仕事は決算をして初めて終わったと言える」。なるほど、一致します。当時、広報の仕事をしていましたが、企画や取材、そして編集などを行い、見えなかった仕事が形になった段階で仕事が仕上がると思っていました。ところが最後に登場するのが経理処理であり決算でした。
つまり仕事の流れに予算と決算を加えたものが仕事なのですが、大きな組織の中にいると予算の心配は少なく年度内であれば決算が多少遅くなっても問題はないと考えていたのです。
仕事は予算を確保して進めることができますし、決算して仕事を終えることができるのです。それがないと仕事を仕上げたとは言えませんし、完結しない仕事になります。
そして仕事において、最も大切なことが財政にあることを痛感しています。
素晴らしい企画案があっても予算を編成することが出来なければ、それに着手することすら出来ないのです。直接その仕事に関わっていない人を説得して予算を確保することは非常に難しい仕事なのです。自分で企画した仕事は誰でも世界で一番良いと思っています。投資家やスポンサー候補に説明すれば、それが世界一の企画であることを理解してくれると思うものです。しかし投資家からすると「世界一の企画」とされるものは、石ころのようにたくさん持ち込まれていますから、そこで篩にかけられます。
そして自分が「世界一仕事」だと思っていたものが、実は狭い日本の中でもそれほどの企画でなかったことに気付かされるのです。不思議なことに、投資家やスポンサー候補の何人と話し合っても、同じ結論が導かれることが多いのです。数限りなく持ち込まれる企画と毎日のように接して目利きしている投資家達は、本物とそうでないもの、本物のうち、世に受け入れられるのかそうでないのかを見抜きます。
そんな人達から予算を得ることは並大抵ではないのです。仕事をするためには予算が必要ですが、それは仕事の入口で最も大切なものなのです。「予算があればできるのに」と思うことは間違いです。予算がないのはたいした企画ではないか、信頼がないかのどちらかです。企画の良さと、人物の信頼の大きさに比例して集まってくるお金の額は違ってきます。
ですから仕事は一人でできないのです。企画を策定する人と資金調達をする人、技術を持っている人などがチームに必要なのです。中でも一見、世界一の結果を残すであろう仕事と直接関係ないと思われる資金調達が最も大切な仕事なのです。仕事の内容は企画によって形を変えますが、資金調達はどの仕事においても存在するもので、誰にでも出来ると思われがちです。しかし誰にでも出来ない関門で、関門を突破する力が信用力なのです。
1年かけて考案した素晴らしい企画であっても、10年かかって獲得している社会からの信頼力には敵いません。
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