609.コミュニケーション力
 和歌山県を英語教育の先進地域にするための会合を持ちました。世界を相手にビジネスで挑戦している現役世代の人は、誰もが英語力の必要性を痛いほど理解しています。英語力こそ世界を相手にするためのが武器であり手段なのです。英語力を持たないでビジネスは成り立ちません。英語力がなくてもビジネスが成立するのは国内だけですから、拡がりはありません。

 そこで世界を舞台にするための英語力とは何なのか議論しました。結果、コミュニケーション力だとの結論に達しました。参考までに、本日議論したお相手は、留学経験があるネイティブスピーカーであり、外国でビジネスの経験があり、現在は大学で英語を教えている先生方ですから納得性があります。

 もう少し噛み砕いて言うと、英語力とは同じ言語を有していない相手と理解し合うことなのです。言葉が違うと理解し合えませんから、共通の言葉を通じてお互いを理解することが必要ですが、その手段が現代の世界では英語なのです。言葉がなくても理解し合えるのであれば英語力は必要ありません。例えば挨拶や感情の表現だけで良いのであれば、顔の表情や身体のポーズから、不完全かもしれませんが読み取ることが出来ます。ところがビジネスになると意思疎通が必要ですし、信頼関係を構築しないと取引は成立しません。その手段が英語力なのです。

 知人でアメリカの要人と友人関係のある日本人がいますが、勿論ネイティブスピーカーです。英語で意思疎通を図っていますから信頼関係に至る訳で、英語を解さない、つまり言葉なくして信頼関係を構築することは至難の業なのです。同様にアラブの国の要人と強い友人関係にある日本人がいますが、彼はアラビア語を話すことができます。言葉を通じて信頼関係を構築しているのです。もし彼がアラビア語を話せなかったら、友人になることはなかったことでしょう。言葉によるお互いの意思疎通がないと信頼関係を構築てきないからです。

 ですから英語力とはお互いを理解し合うためのコミュニケーション力であり、言葉を通じて信頼関係を構築しビジネスなどに活かすことができる力なのです。
 今や国内だけで完結するビジネスは少なくなっています。そして韓国や中国では英語ができて当たり前の時代に突入しています。日本だけが取り残されつつある状況を知るべきです。

 そして日本人の英語とは、日本語と日本文化を理解し体得しておくことが前提です。日本語力がないのに英語力が身につく筈はありません。日本文化を知らないのに英語で日本のことを話せる筈はありません。英語力を向上させる前提は日本人である限り、日本語力と日本文化を身に付けていることが前提です。
 英語教育は日本を滅ぼすとして、小学校からの英語教育導入に賛成しない考えの人もいます。もしそうだとしたら、韓国も中国も英語圏以外の全ての国々は滅びることでしょう。現状は決してそうはなっていませんし、それどころか韓国や中国の経済力や発言力は日に日に増しているようにも思います。残念ながら、現時点では言葉を介さないで異国の人とコミュニケーションを図ることは難しいのです。英語で話してくるアメリカ人と、うんうんと頷くだけの日本人との間にはコミュニケーションは成立しませんし、信頼関係は構築することはありません。やはり会話を通じてお互いを理解し合いますし、文化の違いも言葉を通じて理解し合うことができます。言葉がないと日本文化を世界に認知してもらうことは敵わないのです。

 茶道に関して面白い話を伺いました。茶道では夏の器と冬の器があるそうです。冬用の器はお湯が冷めにくい仕様になっていて、夏用の器はお湯が冷めやすくなっています。夏のこの時期に両方の器にお湯を入れて手に持って見ることで日本文化の繊細さを感じることができるのです。夏のこの時期、冬用の器にお湯を入れたものを手に取ると熱いと感じます。夏用の器にお湯を入れたものに触れると冷めているので触れても大丈夫です。

 この感覚が日本文化なのです。季節感が研ぎ澄まされていて、季節に応じて様式を変えている文化が日本文化なのです。教養として形だけの茶道を学んでいても手順だけを知ることになり、日本文化を体得することはできません。日本文化の繊細さを体得した人だけが日本語で考えたことを、英語を通じて外国人に伝えることができるのです。
 如何でしょうか。日本を世界に誇るためには日本語力と日本文化力に基づく英語力が必要なことが分かります。

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