サブプライムローンの問題で世界的に経済が停滞し始めました。欧米と比較して影響が少ないと思われていた日本も影響が及んでいます。日本経済は好調ですし、邦銀はサブプライム問題の影響は少ない筈なのに、何故か日本経済が沈み始めているのです。
不思議と言わざるを得ないと思うのですが、現実は現実です。
経済活動が盛り上がらない要因の一つに、労働者の賃金が抑えられていることを挙げたいと思います。ドイツ証券副会長の武者陵司氏が、電気新聞の時評で次のように見解を示しています。
「内需創造の不在が起こっている。アメリカは日本と同様にグローバル企業の収益が好調だが、その超過企業利潤は国内における賃金の上昇、企業配当、株価の上昇などとなり国内の内需に結びついている。 ―中略― 日本は企業の超過利潤がそのまま過剰貯蓄となって海外に漏出し内需を作り出せないでいる。特に問題は賃金上昇率の低さだ。米国の場合、生産性の伸びが高く収益好調なグローバル企業の賃金が上昇し、それが生産性の伸びがあまり高くない国内労働集約産業の賃金にも波及している。国内サービス産業はそれを価格の引き下げでカバーしている。それに対して日本は、生産性の伸びない内需産業で賃金の頭が押さえられ、生産性が高いグローバル企業でも賃金が抑制されている。この差が消費活力、内需創造力の格差となっている」(電気新聞2008.3.24時評)との指摘です。
2008年の春闘では企業業績の好調、不調に関わらず、要求額に対して回答額は低く、賃上げはかなり押さえられた感があります。経済活動を活発化するためには、設備投資と共に消費拡大が二大要素ですから、業績の良い会社が従業員の可処分所得を増やしてくれることが必要なのです。数字の上で景気拡大と言われていたのに生活者に実感がないのは、従業員への利益配分が行われていないからです。内需創造のためには消費が欠かせませんが、その根底には賃金上昇にあるのです。
国内や地域の消費を増やし経済活動を活発化するためには、可処分所得の増加は欠かせません。給料が増えないと将来不安から、所得の余裕分は貯蓄に回すことになります。ゆとりを感じるためには賃上げが必要ですし、経済とは気持ちから派生する要素が強いのです。気持ちにゆとりを持つためにも、地域の経済循環のためにも、経営者側と労働者側の折り合いが大切なのです。
日本経済に逆風だと言われている円高ですが、視点を変えれば、輸入品は安く入手できる環境になっているのです。強い円で外国製品を輸入し、国内での販売を拡大すれば、の内需を拡大できます。
原油高も、これがきっかけとなって道路特定財源の問題などにも関心が高まりました。危機はその原因を考えることにつながる要因なのです。問題意識が高まったことから、道路財源は適切な活用をされる方向に舵を切りました。これも反面教師の役割を果たしてくれました。
株安も経済の先行きに不安感を与えていますが、視点を変えたら、日本経済実力が要因での株安ではありませんから、場合によっては将来の富を蓄えるためにも今が買い時かも知れません。(このことは株の購入を奨励している訳ではありませんから、各自で判断すべきことが大前提です)
このように、経済を不安にさせている円高、原油高、株安の三点セットも、視点を変えたら明るくなるものです。内需創造が今こそ大切です。
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