491.ショートカット
 トヨタ自動車の渡辺社長が「走れば走るほど空気がきれいになる」、「一度燃料を満タンにすれば世界一周できる」自動車を作ると話しています。(朝日新聞2008年1月1日)
 世界を元気づける素晴らしい宣言です。恐らくトヨタ自動車社内でも夢のある宣言と捉えられていると思います。関係者以外は「実現出来っこない」と思っているでしょうが、私は実現出来ると思っています。
 渡辺社長は、「夢のようだと言われるかも知れないが」とした上での宣言ですが、絶対に実現出来ると考えている筈です。もしかしたら、既にその種はあるのかも知れません。真剣に、そして実際に描いた夢は現実に向かいます。夢を描いた人だけがその夢の種を見つけることが出来るのです。

 私達はややもすると「出来そうだからやる、出来そうにないからやらない」と考えますが、それでは今以上になれません。行動の基準を「やろうと思っているからやる」と設定すべきなのです。「やろうと思うこと」には出来るかどうかの基準は入っていませんから困難が伴うかも知れません。でもやり遂げる意思があれば出来るのです。
 後継者が社会的正義に基づいて意思を持ってやろうとしていることに対しては、周囲が後押ししてくれます。

 日本を代表する企業も創業者が夢を描いて、夢を実現させてきました。私達はその果実の恩恵を受けて豊かな生活を過ごせているのです。トヨタ自動車、松下電器産業、ソニー、京セラなどは、その企業が成長する過程で、リスクを伴う大きな決断を繰り返してきた筈です。他よりも早く成長しようとするなら、どこかの部分でショートカットする必要があります。人には寿命がありますから、他人と同じ速度で進んでいれば大きな成長は出来ません。大きな決断をすることが、成長する過程をショートカットさせてくれるのです。

 ショートカットするためには、夢を実現させてくれるための種を見つけたら、それを受取り自己責任という決断に迫られる筈です。重大な場面での決断力は経営者に欠かせないものです。夢を実現させたいとする強い気持ちと、やがて現れる幸運の機会を信じて決断することです。
 超一流になった企業が他と違っていたのは、トップの夢の大きさと決断力だったと思うようになりました。完成した結果から評価すると色々な理由づけは可能ですが、その当時に遡ると、夢を実現させるために必要な大きな決断をしたことが後の発展につながったと思うのです。

 私達の生命は限られていますから、一歩一歩着実に歩むと同時に、幸運を見つけた時にはショートカットするための大きな決断が必要です。その機会は誰にでも訪れるものではありませんから、機会に恵まれた人が全てを賭けて決断し、その恩恵を周囲の人に施すことが大切です。周囲は将来を切り拓くトップの決断を待っているのです。

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