485.秋休
 大阪を拠点として活動している男性デュオ「秋休」。2007年のクリスマスイブ、和歌山近鉄百貨店二階会場でのクリスマスライブのため和歌山市に来てくれました。彼らは、夕刻からのライブのためお昼にお会いし懇談しました。「秋休」は河本知樹さんと平松契帥さんのふたりで、結成は6年前のこと。現在は路上ライブを中心の活動をしていて、既にアルバムもリリースしています。

 名前の由来は、二人が出会った季節が秋だったこと、学校には秋休みがないことから、自分達の音楽を聴いて心身を休めて欲しいとの願いを込めたものです。「安直につけたかなぁ」と笑っていましたが、名前は実力がつくと光る名前になりますから心配はありません。
 勿論、作詞と作曲は二人で行っていて、全曲ともオリジナルで勝負しています。
 和歌山県でのライブは今回で4回目。会場は人で埋まっていたのですが、実は彼らには熱心な「追っかけ」がいるのです。今日も大阪は勿論、三重や名古屋からもファンが和歌山市に来てくれていました。

 事前にCDを預かっていたので聴いていましたが、彼らのライブは初めてです。クリスマスらしい曲を選んでいたのですが、かよわくて力強い歌声が乾いた空気をしっとりとさせました。立ち止まる人も出て駅前は人集りとなったのです。
 彼らがストリートを始めたのは「無名の僕達の演奏に立ち止まって聴いてくれる人がいることに感動を覚えた」からです。自分達の歌で人を幸せにさせられる。歌の力を知った彼らが、歌で幸せを伝えようとしているのです。

 実は昨日の日曜日、ある国会議員と懇談する機会がありました。そこで打ち解けた話になって、議員の9年前の出来事を話してくれたのです。和歌山県の海南市駅前に商店街があります。当選間もないことから、当時無名のこの国会議員は街頭演説をしていたのです。そこで議員は聴こえてくる歌声に気付きました。海南駅前で二人の男性デュオが演奏していたのです。しかし聴く人は少なく、立ち止まる人もいませんでした。議員は二人に近寄り、「お互い頑張ろうな」と声を掛けて、二人のインディーズのCDを買ったのです。

 どちらも無名の二人です。一人は国政にその身を賭けようとしていました。ふたりは音楽の世界で駆け上ろうとしていました。まだ世に出て間もない政治家と、まだ世に出ていない男性デュオの若い日の二組の人間でした。
 最後に、その国会議員が買ったCDを見せてくれました。CDのケースには小渕健太郎と黒田俊介のサインがありました。そう、今をときめくコブクロの二人です。コブクロの二人が無名時代に海南駅前でストリートを行っていた時の出来事でした。

 時は流れて2007年、あれから9年が経過しています。二組の無名の人間達は世に飛び出し、どちらも今ではその世界で欠かせない存在になっています。実に9年の歳月を要しました。自分に実力があると信じていても、世の中の人にそれを知ってもらうためには年月が必要なのです。

 夢と希望だけを頼りに自分の可能性だけを信じて飛び立とうとしていた二組。今尚、更に高い空に向かって、羽を休めることなく羽ばたこうとしています。
 「秋休」も、そうしたこれから飛び立とうとしている二人です。クリスマスイブの空高く、「俺達のことを覚えてくれ」との祈りを込めた歌声は間違いなく天に届いています。今から9年後、「秋休」が芸能シーンを駆け巡っているかも知れません。私も彼らに負けないように昇りたいと思っています。

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