480.観光学その1
 観光学を学べる場所が和歌山県内に誕生しました。和歌山大学観光学部の開設です。社会に変化が起きる時、その兆しとしてその前段、と言っても10年ほど前に学問が変わっているそうです。つまり社会の変動は学問が主導していると言うものです。観光立国を目指している時代、国立大学法人和歌山大学に観光学部が開設されることは、この分野で時代の最先端を走ることになりますし、和歌山県は観光産業で勝負することを義務付けられた訳です。

 さて観光産業に学ぶ人に必要なものに関して、元少子化担当大臣の猪口氏の話を伺う機会があり観光産業についてまとめてみます。
 ひとつ。観光を学ぶ人はこの世界に平和を創る人であり、観光学を教える人や観光産業に関わっている人は平和を支えている人なのです。観光は平和な時代の象徴的な産業であり、平和であるからこそ人は各地を訪れ見聞を拡げることが出来るのです。平和への思いを持った人に観光産業に関わって欲しいものです。21世紀の文化の本質は、弱い立場の人を助ける社会の形成です。この本質を理解して行動出来る人が増えると世界は平和に向かって行きます。

 ふたつ。英語を道具として活用出来る人材を育成することが必須です。言葉はコミュニケーションの基本ですから、学問ではなく道具として操れる必要があります。言葉でお互いの意思疎通を図りますから、英語力は観光産業従事者にとっては必須アイテムです。和歌山県に行ったら観光地の皆さんの英語力は素晴らしいといわれる地域でありたいものです。このことで他の地域と差異化が図れます。

 みっつ。人の人生のピークを預かる産業であることを意識することが必要です。旅に意味を持たせることがあります。新婚旅行に。結婚記念として。卒業記念に。家族の旅行として。そしてその人の特別な日など、ビジネス以外の旅行には何かの意味があるものです。もしかしたら、人生の大切な記念の一日になるかも知れないことに関与しているのが観光です。大切な記念の日の思い出は、後の人生を支えることになるかも知れないのです。人生のピークの時間は決して長い時間ではありません。
 結婚式の一日。卒業の一日。論文発表の一日。入社試験合格の一日。人によっては、ラグビーの花園で闘った一試合や高校野球の甲子園で闘った一試合など。特別な一日が後で振り返ると人生のピークであったと思えることがあります。人にとって思い出とは相当長い時間ではなくて「その一日」であったり「その一瞬」であったりするものです。でもその一瞬が後々の人生を支えてくれる宝物になるのも事実です。

 誰でも思い出として持っている人生のピークの時間。そんな特別な思い出の報酬として旅行があります。そんな大切な思い出の旅行の時。観光産業が人の人生のピークに関わっているとすれば、良い思い出作りのために極めて責任は重大です。
 人生の宝物が多くなるほど観光に向かう機会が多くなり、その旅行が楽しいものであれば、旅行自体もまた新しい宝物になる可能性があるのです。和歌山県が、そして観光産業に携わっている人達が、観光に訪れる人の人生の宝物作りに参加している意識を持つことが「おもてなし」の真髄なのです。

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