404.松枯れから学ぶ
 和歌浦地域の松枯れ問題への取り組みが開始されています。平成19年1月20日には、地元の皆さんと松枯れ問題に協力している事業者が協力して保全活動を行うことが決定しました。地方自治体からの支援もあり、景勝地の松を保全する活動が継続していくことを嬉しく思っています。

 さて松枯れ問題に関して協議している中で、松について興味深い話を伺いました。松が枯れるのは松くい虫により養分を摂取されてのものではないと言うものです。松は樹木内へ松くい虫に侵入されると、松くい虫を殺すために水分の供給を自ら断つそうです。詳しく述べると、松くい虫は通常、木の上の方に寄生します。松は地中の水分を根から取り入れ全体に供給しているのですが、木の上部に松くい虫が侵入されるとその寄生している箇所への水分供給を自らの意思で断つのです。松くい虫は水分がないと生きていられませんから死に絶えますが、松にとっても水分供給を断つことは、自らの生命を脅かすことになります。松の木の上部が枯れて色の変色があるのは、その部分への水分供給がなされていないことを示すものです。

 仲間の木への松くい虫被害を防止するために、自らの生命を犠牲にしてまで松くい虫を殺そうとしています。つまり自らの生命よりも種の存続を優先させた、まさに生命らしい生き方です。自然界では、弱ったり傷ついた場合、自分を犠牲にして種族を守ろうとすることもあると聞きます。寄生されたまま個人が生きながらえることは、同種の周囲の仲間への伝染が予想されますから、その道を選択しないで仲間の存続のために自らの命を断つのです。凄まじい自然界の法則ですし、その本能があるからこそ現在地球上に存在している生命体があるのです。
 自己の保全だけを図っていては全体に影響を与えること、自然界生命体は本能的に知っています。松の木でもそれを知っているのです。

 ところが人間界は自然界とは異なる構造を採っています。責任ある地位にいる人は汚職や犯罪に関わったとしても、自らその地位を退こうとはしない場合が多いようです。発覚して初めて責任取りますが、マスコミに取り上げられた場合、自分だけの問題ではなくなり組織全体の問題として取り上げられるケースがあります。個人の責任ではなく、腐敗した組織という形で取り上げられる場合は少なくありません。そうなると組織全体への不信感や疑念が生じ、社会的存在としての組織が行き詰まります。責任者の不祥事などによって信頼をなくした組織体が再び信頼を取り戻すことは容易ではありません。
 事件に関与した場合、自らを断って組織を守ることが自然界の法則に近いのではないかと感じます。
 組織は生き物に例えられることがあります。潔い責任の取り方や組織の存続を考えるのであれば、自然界に見習いたいところです。自然界の法則に逆った生き方や組織運営をしていると、いずれ裁かれる時が来るようです。
 松の木への接し方が変わりそうな話です。

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