386.能力を引き出す力
 トップに立つ人に求められる資質は様々ですが、何人かの意見を総合すると、個人の資質よりも周囲の皆さんの能力を引き出してくれる人が求められているようです。どれだけ個人に素晴らしい能力があったとしても、所詮一人では何もすることは出来ません。一緒に取り組んでくれる人や支えてくれる人がいて初めて仕事をすることが出来るのです。

 まして現代社会は過去のどの時代よりも、個人レベルまで情報が行き渡る環境にありますから、単に頭の中で知識を保持しているだけでは何の優位性も保てません。インターネットを接続すれば、直ぐにそこから無数の情報と知識を取り出すことが出来ます。家の隣にコンビニがあるようなもので、部屋や冷蔵庫に何も保管していなくても、対価を支払えば必要な時に欲しい品物を持って来られるのです。倉庫や冷蔵庫がなくても家として存在することが可能なのです。

 人の活動も同様に、全ての知識を詰め込まなくても課題を解決するための必要な法律やノウハウはインターネットの向こう側に存在しています。しかも毎日のように限りなく進歩、増殖しているのです。ですから一人が全ての知識を有する必要はなく、情報を使いこなす人や企画力・発想に優れた人、実行力のある人、人をまとめる能力のある人、話を聞いて回答を導くことが出来る人、不安を和らげ企画を進めることが出来る人、などが周囲に存在していれば良いのです。

 つまり周囲と協調性があり、他人の話を聞いてあげられるなど信頼を得ている人が中心にいると、課題解決や仕事が前に進む時代になっています。でも協調性があり他人から信頼を得られることは、決して簡単なものではありません。
 個人で仕事をする職業なら兎も角、公共の仕事や大きな仕事になると、個人の能力よりも協調性や人に信頼される力が絶対優先されます。それが分かっていても変われないのが人間ですし、何も全員がそれを目指す必要はありません。

 適材適所。個性も資質も違う人が集って集団を作り仕事をすれば良いのです。ただ役割を間違えると強い組織になりません。
 強力なリーダーが50人を集められる力を持っているとしても、思いやりのある人の周囲に10人がいて、それぞれが10人を集めると100人になります。周囲から信頼を得ている人の方が大きな組織を作ることが出来るのです。
 極めて独創的な仕事でない限り、1人で考えて50人で実行するよりも、10人で考えて100人で実行する方が良い仕事が出来ると考えるのが普通です。
 周囲と協働出来て、周囲の人の力を引き出すことが出来る人を時代は求めているようです。
 時代は人が作るものですが、時代が求めている人は絶妙のタイミングで時代が指名してきます。

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