357.仕事の目的
 仕事をするのは人の役に立つことを目的にしています。誰の役にも立たないのに存在する有意な仕事はありません。
 生活商品を製造している会社が存在しているのは、多くの人の生活を快適にするための役に立っているからです。
 飲食店が存在しているのは、食事を楽しんでもらうこと、非日常の空間を楽しんでもらうこと、楽しいひと時を楽しんでもらうという目的があるからです。
 音楽家が存在しているのは、私達は音楽を通じて励まされたり元気づけられたりして、明日に立ち向かう勇気を持てるからです。

 さてタクシーが存在しているのはどのような理由からでしょうか。まず思い浮かぶのは、輸送手段して欠かせないものであることです。そして介護が必要な方や傷害を持っている方には不可欠な存在です。通勤や通学の手段として、そして雨の日や帰りが遅くなった時にはタクシーの有難さを感じます。
 仕事としてのタクシーは、お客さんの喜ぶ姿を見たいから運転しているドライバーの方が多いのではないでしょうか。

 しかしそれ以上の意識を持ってタクシー会社を経営している方がいます。
 単なる輸送手段の提供を目的とするのではなく、人々の人生の式典をサポートする役割を担っていると考えています。例えば披露宴の後、新郎新婦が式場を後にする時に利用するのがタクシーです。タクシーは新婚さんの人生の門出を演出しています。
 告別式の後、斎場に向かう手段としてタクシーを利用する場合もあります。最愛の人との最後の別れ、その最後の場面に向かう手段もタクシーです。
 日常生活おいても重要な場面でタクシーは登場しています。家族での夏休みの旅行。駅や空港まで向かう手段としてタクシーを利用します。そして旅行からの帰り、沢山のお土産を抱えてタクシーに乗り込み自宅に帰ります。楽しい家族の思い出を支えてくれているのがタクシーです。

 私の子ども時代、タクシーに乗ることは特別な出来事でした。自家用車を持っている人が少ない時代でしたから、家族で出掛ける時、通常はバスを利用するのですが、本当に年に数回タクシーを利用したことがありました。少しリッチな気分がした特別な日であることを実感したものです。
 このように結婚式や式典、家族旅行を初めとする特別な日など、私達の人生の節目にはタクシーが欠かせないのです。

 タクシーは人を安全に早く運ぶことが目的ですが、実は私達にとって人生の大切な節目を演出する目的も持っているのです。それに気づいたドライバーやタクシー会社に乗り合わせると、気持ちのこもった挨拶や会話、気遣いのある運転で思い出を充実させながら、安全に目的地に送り届けてくれます。
 タクシーはお客さんの人生の節目を飾っていると考えて運転して欲しいとドライバーに伝えている経営者がいることに感心しました。仕事は単に仕事ではなく、直接お客さんの人生に関係ないと思いますが、実は様々な場面で関係する方の人生の一部を彩るものなのです。
 仕事の真の目的を知ることによって、自分の仕事に誇りを持つことが出来ます。他人の人生に影響を与えられる仕事はそれだけで素晴らしいことに気づきたいものです。

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