第二次世界大戦後制定された日本国憲法は、その後一度も改正されることなく21世紀に至っています。憲法については、小学6年生の時に公民の時間で憲法全文を暗唱されられた記憶があります。全員が覚えられるまで続けられた厳しい授業でしたが、そのお陰で崇高な憲法前文が記憶に残っています。
普段は意識することがない憲法ですが、ここに来て改正問題が国会と政党で議論され続けています。自民党、民主党とも憲法改正草案を取りまとめて発表しました。改正する必要性は、社会のおかれた現状が既に憲法の理念からかけ離れているので、現状に即したように、つまり現状に合わせようとすることから来ているようです。ドイツのビスマルク元首相の言葉を引用して放っておいたら「必要は法を破る」ため、大幅なズレがない今の内に修正する必要性を感じていることも理由の一つです。
この憲法改正草案が発表された翌日、憲法改正案についてこれに関わった憲法学者から丁寧に説明を受けました。簡潔、格調、ロマンの香りがする文面が散りばめられていて現代風であることは認識出来ました。国民主権は第一条、基本的人権を第二条、平和主義が第三条にあるように、最も大切な三権は当然保護されています。
そして当然のごとく憲法尊重擁護義務を最終条文に謳っていますから、国が個人を尊重することに変わりはありません。さらにプライバシー権や知る権利などの人権を条文化するなど大切な人権について具体化させるなどの配慮していることも伺えます。
現代の憲法を研究している最高レベルの方々が議論を重ねて草案を作成しているため、条文は平易な表現で分かり易いことは理解出来ます。
それでも説明を受けた多くの人は、その主旨を理解しかねている様子でした。理解が難しい理由はとても簡単です。それは現行憲法の精神について知らないためです。質問では「主体が分からない」「憲法は誰が守るべきなのか分からない」「条文が抽象的すぎるので曖昧」などの質問がありました。質問に答えたのは草案を作成に関わった一流の憲法学者です。
憲法学的な回答で各条文改正の本質は良く分かりましたが、それでも理解出来ないという意見があったのも事実です。それは憲法を刑法や商法などの他の法律と同等のものと捉えているからです。憲法は他の法律と全く別物ですから、決して個別具体的なものにはなりませし、国が目指すべき理想を掲げるべきものです。
説明会に参加していたのは全国からの地方議員でした。普段から条例を取り扱っているし法律に関しても認識のある方達であっても、憲法の条文の本質を理解するのが難しいのです。しかも説明は約2時間もかけて行ってくれましたから、学問的な理解を深める場合は別として、一般的な説明会してはかなり丁寧なもの言えます。それでも理解は深まらないのが現状です。
このことから、マスコミを通じて周知するだとか、草案を配布して周知しそれで国民投票に問うことは疑問です。憲法改正問題は、現行憲法が時代遅れだとか古臭い、或いは流行だからなどの理由で先行させるのは、有識者でも理解が深まっていないことを考えると問題だと感じます。
時間をかけて内容の理解深め国民的議論にまで高められて初めて、改正問題が深く議論されていきます。現時点では、全ての人権が保護されるように憲法で具体化させろなどの乱暴な意見も出ています。現時点で人権とされていない権利が人権に昇華するためには、どのような条件が必要なのかも知っておく必要があります。
普段は考えることもない憲法ですが、人間にとって大切な三権と人権を生み出してくれる装置がついているのですから、やはり大切なものなのです。戦後初めて改正論議が交わされているのですが、国レベルの議論だけにしておくのは勿体無いことです。
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