夏休みを利用して英国に語学留学していた学生と懇談しました。彼はテロ騒ぎがあった時に一人で英国に向かい6週間の語学研修を終えて無事帰国しています。行く前よりも少し逞しくなって帰ってくれました。
語学力向上も目的ですが、世界中の学生と友達になることも行くに当たっての大きな目的で、それも見事達成しています。
UAEやリビアの学生と仲良くなったことを話してくれました。文化や宗教観は違っても学ぶ意欲と若さは同じです。イスラム教ではアルコールは飲みませんし豚肉を食べませんから食生活は日本人と全く異なります。懇親会でもビールなどは一切飲まないし、お菓子や出された見慣れない料理については全て豚肉、または豚肉エキスが含まれていないか確認するようです。イスラム教は戒律が厳しいことは認知していますが、日本人のように妥協をすることなく徹底しています。
鶏肉などは食しますが、どれだけ満腹でも肉類を残すことは絶対にしません。その理由は、命ある動物を人間が生きるために殺して食しているからです。大切な命を人間のために捧げてくれた動物の肉を残すことは出来ないのです。日本の食前の習慣である「いただきます」は、大切な命をいただくことを意味していますが、私達が忘れていることをアラブ圏の若い学生は大切に守っています。
野菜は残しても肉類は残さないことの意味は、子ども達に伝えたいことのひとつです。
さてアラブ人の学生と仲良くなった彼は、帰国前の夜「東洋人なのに親切にしてくれてありがとう」とお礼を言ったところ、彼らからの返答は「それは当たり前のことです。例えば、馬鹿と言われたら馬鹿と言い返すでしょう。親切にしてくれた人には親切にするのは当然のことです」と言うものでした。
人間として当たり前のことかも知れませんが、先進国の一員である私達はややもすると素朴な心を忘れているような気がします。親切にしてくれた人に付け込むことをしたり、親切よりもお金を重視したりする風習も出始めています。
他人から親切にしてもらったらそれ以上に親切にすることが世界共通の考え方です。当たり前のことが当たり前ではなくなっている日本において、海外の視点を受け入れることは大切なことです。
英国での授業の一コマで、世界で一番進んでいる国はどこだと思いますかをテーマに議論をしたそうです。日本人の彼は「アメリカ」と答えたのですが、大半の学生から微笑みながら「違うよ」と言われたのです。世界で一番進んでいる国は日本だと言うのです。日本に暮らす日本人はこの事実に気づいていません。
毎日の出来事に不平、不満を漏らしていますが、この国で不満があれば世界のどこの国に行っても不満から逃れることは出来ません。パソコンで情報が容易に入手出来る、好きな映画を見られる、ゲーム機器とゲームソフトを持っている、新車を購入できる、世界に通用しているアニメを生み出している、携帯電話が溢れている、これだけ何でも揃っていて、若くてもその大半を入手している国は日本以外にありません。最も恵まれた生活環境で暮らしていることを認識すべきなのです。
それを享受するだけではなく、日本以外の国にもこの幸福を分け与えるための活動を起こすことが日本に求められていることです。日本にいると気づかないことを海外で学べることもあります。
彼の話を聞いているとかけがえのない体験をしてきたことが分かります。来年大学卒業後は再び英国に渡り、語学力を高めて大学院入学を目指すことになります。合わなかったのは食事だけの彼には順応性がありますから、世界観を身につけて和歌山市の将来を支えて欲しいと願っています。
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