137.バリアフリー施策
 新しい作られる公共施設や企業のお客さまコーナーには車椅子用トイレが設置されています。しかし以前に建設されている建物には設置されていません。当時の社会にはバリアフリー、ユニバーサルデザインの概念がなかったので仕方がないことです。ただ要望が増えているのは事実です。
 特に障害者に対して貢献しようとしている企業やサービス業経営者の方は、福祉施設からお互いの交流活動として迎え入れているため苦悩は深まっています。利用していただく施設には車椅子用トイレがないため、比較的広いトイレに付き添いの人が一緒に入って用を足しています。施設でもお世話をしている人か一緒なら問題は少ないのですが、他の人が付き添っている場合には、プライバシーの問題でトイレの利用が難しくなります。
 人権と人格は誰にでも付与され保護されるべき自然権ですから、ハード面で保護されない事態は避けるのが基本です。ところが車椅子用トイレを設置しようとすれば、設置場所の確保と多額の資金が必要となります。一箇所当たり400万円ですから簡単に設置することは出来ません。障害者の方に社会体験をさせるために、自分の施設に迎え入れ交流の機会を得ようと思っている人ほど苦しんでいます。
 そのため和歌山市には「和歌山市福祉のまちづくり民間施設設備事業補助金交付」の制度があります。この目的は和歌山市内で自ら公共施設を持っている民間事業者が、和歌山市内にある既存の施設を障害者、高齢者が安全に利用するために講じる施設の整備工事に要する資金に対して、予算の範囲内で補助金を交付するものです。公共施設とは病院や学校、銀行の店舗、百貨店、ホテルなどを指します。
 整備工事とは、出入り口への自動ドア設置、障害者用トイレ設置、視覚障害者用誘導ブロックの設置、出入り口でのスローブ設置などです。一施設あたりの補助金額の上限は150万円となっています。
 施行は平成10年6月1日ですから、バリアフリーが社会通念化して制定されたものであることが分かります。
 問題と思われるのは、制度はあるものの予算額が貧弱なことです。平成16年度で300万円、平成17年度に至っては150万円の予算ですから、分かりやすい事例を当てはめると、民間事業者が車椅子用トイレを一箇所設置し、補助金を申請すればもう予算はなくなります。他にバリアフリー化を図りたいと思っている事業者がいても、全額自己資金で設置することになります。
 公共施設のバリアフリー化を進めるのは社会の要請で必要なものです。福祉のまちづくりや障害者や高齢者への福祉充実をテーマとして掲げている地方自治体であるなら、制度も予算も意識啓発も先導しなくてはなりません。和歌山市の場合は民間事業者が計画している障害者施設整備に対して補助出来るのはたった1件です。これでは福祉のまちづくりを進めるのは難しいのです。和歌山市では高齢化が進んでいるため、福祉施策に力を注いでいると思っていたのですが期外れな結果です。
 和歌山市長期総合計画の計画期間は平成9年度から平成22年度までとなっているように、
この計画がまちづくりの基本です。平成19年度には見直しをするようですが、基本的な方向性は大きくは変わらないと認識しています。基本計画の各論の第2部では、健康でおもいやりのある安心して暮らせる都市を論じています。ここでは「公共施設などの障壁除外(バリアフリー)化を進めるとともに、不特定多数が利用する民間施設についても障壁除去化を促進します」と記載されています。
 このまちづくりの根幹となる計画を進展させるために、要綱が制定され毎年の実行計画を策定し、実現のために予算化が図られるのが経営の基本です。
 さて年間1箇所程度の障害者施設整備補助金で、民間事業者の公共施設のバリアフリー化が図られて、思いやりがあり安心して暮らせる和歌山市が実現できるのでしょうか。平成22年度まであと5年ですから、このまま進捗すると、5箇所だけ民間事業者の公共施設のバリアフリー化が図られることになります。和歌山市に障害者や高齢者が出入りする民間事業者が少ないとしても、何とも気が遠くなるような話です。
 障害者や高齢者が元気にまちに出て行く環境を整えることが、和歌山市にとっての重要な課題です。

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