66.インキュベーション
          センター
 東京都にMINATOインキュベーションセンター(MIC)という、起業志望者を支援する施設とソフトを持った施設があります。建物は廃小学校を利用したもので、耐震補強と建物の外観を塗り替えています。
 ここの特長は建物よりも充実した支援体制にあります。賃料は周辺の事務所と同程度ですから安くありませんが、サポートを希望して起業を考えている人達が集まってきます。
 起業希望者は最初、プレインキュベーション期間を経ます。6ヶ月毎に事業見直しを行い、事業計画が適正なのかサポートが必要かを判定し、駄目と判定されたら退去となります。プレ期間を経た後はメインインキュベーションとなります。ここでも1年毎に事業計画を判定されます。
 起業で成功するにはアイデアを商品化するスピードが第一です。スピードがなければどんなに良いアイデアでも世にでません。目途は2年、それで起業の可能性がないなら、それ以上そのアイデアに取り組んでも駄目です。それは個人や技術、知識を否定するものではなく、アイデアが駄目だったと評価するものですから、次のアイデアを引っ提げて何度でも挑戦したら良いのです。

 起業家を支援するための人材としてインキュベーションマネジャーの育成研修会も実施しています。インキュベーションマネジャーについてひとつ疑問を投げかけました。
 自分で起業したことがない人がインキュベーションマネジャーとして起業希望者の相談に乗っては、十分な指導ができないのではないですか、というものです。
 それに対して、シドニーオリンピック金メダリスト高橋尚子さんのコーチである小出義雄コーチが金メダルをとっていないことを例に挙げてくれました。知識に加えて指導力や思いやり人生経験に基づく助言などが指導者に求められるのです。
 全国にインキュベーションセンターは430個所ありますが、箱モノを賃貸しているだけでサポート体制が弱いのが課題です。入居者は事業を早期に実現するために取り組んでいるので、それをサポートしてくれる人が近くにいることが大切です。大手コンサルタント事務所が相談に乗ってくれる体制をとっている個所がありますが、一部上場企業に対するアドバイスと一から起業する人へのアドバイス内容は異なりますから、十分な支援となっていません。
 風邪気味なのに、精密検査を受けようといきなり脳神経科へ行くようなものです。最初はかかりつけの医院に行くことが解決の早道です。それで分からなければ総合病院に行けば良いのです。十分な知識を有するインキュベーションマネジャーがそれぞれのセンターにいてサポート体制をとる。解決出来ない問題は、本部的機能を要するMINATOインキュベーションセンターに問い合わせるしくみがあれば解決です。
 人材を社会に送り出すために、やる気のある起業家を早期に育成するしくみが既にあります。地方からも起業家を輩出させたいものです。

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