64.70年周期説
 70歳以上の人と会話をするのは有意義です。それは戦争経験や人生経験を重ねているため、自分が知らない時代の空気を感じ取れるからです。戦争体験をした人は例外なく戦争は二度と起こしては駄目だと言います。戦争体験のない人たちが、自分達が戦地に赴かないことを前提に話し合いを進めるのは危険だと言います。権力者は決して戦地に立ちませんから他人の目で語り、それは当事者の視線とは異なります。自分達の方向性を経験者と話をすることで、直近の歴史と照らし合わせてこれからの問題を考えることが出来ます。

 歴史は70年毎に繰り返えすという仮説があります。 
 一昔前まではひとつの世代が終わるのに70年程度要していたため、世代が入れ替わることで歴史は最初のステージに戻ります。そうして次の世代が新しい時代を切り開き、70年後同じように完全に世代交代が行われ時代が変わります。強力な世代が時代を築き、その世代の下は時代について行く役割を担い、制度疲労を起こす頃再び強力な世代が出現します。技術革新も経済も人間によって運営されていますから人が入れ替わる時期から想定すると理解できます。

 人間は生まれてから義務教育の時代までは、教育訓練を受け先人達の経験や社会の秩序を学びます。次の30歳位までは社会で学んだことを実践していく過程です。その後50歳位までは社会の中心で時代を背負って生きます。経験則を受け継ぎながらも自分が身につけた叡智によって社会を変革していく時代です。最後の人生は、後進に対して自分の経験を伝える期間です。経験やお金はもっていく事が出来ませんから、次の世代に伝えることが不可欠です。伝えることで初めて社会で活かせます。自分の行ったことをそのまま引き継ぐのではなく、志を引き継ぐことで社会は発展します。志を持って生きた人は誰でも、後継者に志を引き継ぐことが出来ます。簡単ですが最大で最高の引き継ぎは志です。

 県展に数多くの作品の入賞を果たしてきた人の葬儀に参列した時、会場には生前の見事な作品が飾られていました。でも作品を取り引きされているプロのものなら、本人が死しても作品に命は残り人々の間に流通されます。しかしアマチュアの作品は取り引きされることなく、本人が去った後は家族か親類の元で倉庫に保管される程度です。自分の全てをかけた作品という有形物で生き様を残してもこの程度の扱いとなります。
 有形物で残すよりも、生き方や志という無形のものを残す人生が本当に生きたと言えます。ジョン・レノンの歌はその生き方と共に残っていますし、松下幸之助氏の経営哲学は脈々と引き継がれています。そのCDや会社の寿命よりも、志は長く語り継がれるのは間違いありません。
 そろそろ次の時代が近寄っています。先の70年を生きた人たちの経験を吸収することで次の70年に活かすことが出来ますから、70歳以上の経験談を聞くことは大切なことです

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