25.マニュアルと
      サービス
 最近、ファーストフード店に関わらず、飲食店や会社、セミナーなど、どこへ行っても従業員の応対が良いことに感心します。お客さまを第一に考える日本のサービスレベルは世界でも最高レベルです。
 かつてアメリカの企業研修に行った経験からも、外国のサービスは余り良くありません。列に並んでいて、順番が来ると「NEXT」の呼びかけがあるだけです。最初は物足りないのですが、当然サービスもコストに入っていますから、過剰なサービスは不要です。
 お客さんが自分で決めるだけの知識が不足している場合に、求められたらアドバイスする姿勢で良い場合があります。「いらっしゃいませ」「ご注文は」「復唱します」「少々お待ちください」などの言葉は余り聞きません。笑顔と迅速丁寧な対応、印象の良い接待、お客さんのわがままを聞いてくれる、日本はサービス天国です。
 
 どこの企業でも蓄積したノウハウをマニュアル化しているため、新人でも優れたサービスを提供できます。普段は、人によるサービスの違いは感じられません。
 違いが出るのは、とっさの時の応対です。
 ある講習会会場での光景。時間に遅れて入ってきた人は「すみません、遅れました」と一言。前で説明していた従業員は「お入り下さい」。そのまま講習は続きました。
 応対はマニュアル通りで、特に問題はありません。

 同じ講習会で、ある新人が人前で説明していた時です。遅れて入ってきた人は、やはり「すみません」と一言。この新人は「お客さま、お待ちしていました。始まったばかりです。どうぞこのお席にお座り下さい」と応対。会場に感心のため息が溢れました。
 マニュアル通りの応対でも気持ちは良いのですが、人が心から発する言葉にはかないません。マニュアル通りよりも、気持ちのこもった言葉の方がサービスレベルは優れています。マニュアルだけで経験を積むと、自分の気持ちを表現することが少なくなります。

 確かに、お客さまの応対はマニュアルに沿って進める方が早く仕事が出来ます。でも人を感動させ動かすことが出来るのは人の気持ちです。価格や商品説明だけではないのです。人の気持ちが込められた言葉は、どのようなサービスよりも優れています。サービスとは決まった形のものではなく、人の気持ちを指します。

 新人の応対事例からも分かりますが、他人の考え方や行動から学ぶことは多く、自分の足らない個所を補えます。人は、他人の考え方を受け入れるだけの容量が必要で、それが小さいと成長の速度は遅くなります。誰でも歳と共に成長しますが、他人から学ぶことで成長の速度は増します。小さな積み重ねですが、その差はやがて大きなものになります。

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