平成18年12月6日(水)
@.平成18年12月
 和歌山市議会一般質問(1)内容・答弁
(1)保健衛生行政について

 こんにちは。ただいま議長のお許しをいただきましたので通告に従いまして一般質問を行います。今回は「保健衛生行政について」と「市とNPOとの協働について」を取りあげます。実務レベルの話が中心になりますが、どうかよろしくお願いいたします。

 まず食品衛生法に基づく行政指導に関してです。今年に入って飲食店においてノロウイルスによる食中毒被害の発生が多く見られています。食の安全と安心のために飲食店で食中毒を発生させてはならないものであり、万一発生させた場合には、食品衛生法に基づく行政処分が課せられることになります。

 具体的には食品衛生法に基づく営業の停止命令が下されます。この根拠となるのは同法第55条で、該当部分を抜き出すと「営業者が(中略)基準に違反した場合においては、(中略)営業の全部若しくは一部を停止し、若しくは期間を定めて停止することができる」とあります。つまり飲食事業者がノロウイルスによる食中毒被害を発生させたら、和歌山市から当該事業者に対して営業停止命令が宣告されます。ノロウイルスによる食中毒の場合だと、通常3日間の営業停止命令が主となっています。

 市民に食の安全と安心を提供することを飲食業の目的だとすると、食中毒を発生させた場合に営業停止処分を受けるのは当然のことです。そして多くの飲食店の経営者の方々に聞くと、「食中毒は絶対に発生させたらいけないし、発生させた場合は厳しい処分を受ける覚悟は持っている。営業停止は飲食店舗にとって一番重いもので、その覚悟を持って営業している」とのことです。
 今年に入ってノロウイルスによる食中毒を起こした飲食事業者は、和歌山市からの営業停止命令に従い店舗の営業を停止させています。ただひとつ意味合いが異なるものがありました。

 その点に関して説明します。
 平成18年10月18日、和歌山市内のあるホテル宴会場で提供された食事が原因で、ノロウイルスによる食中毒が発生しました。食中毒が判明したのは、10月27日、医師から「和歌山市内で行われた学校の同窓会の出席者が食中毒症状を呈しており、他にも患者が多数いる模様である」との連絡があったことから判明したものです。翌10月28日、和歌山市ではこのホテル宴会場に対して10月28日から30日までの三日間、食品衛生法に基づく営業停止命令措置を行いました。

 さてここで問題となることがあります。営業停止期間中であるはずの10月28日から三日間、このホテル宴会場では予約が入った通りに行事が行われ食事が提供されていました。営業停止のはずなのに宴会場では宴会が開催され食事が提供されていたと言うものです。

 この疑問に関して福祉保健部などと議論したところ、このホテルで食中毒が起きたのは4階の厨房であり、その厨房に対して営業を停止したと言うことです。つまり4階の宴会場で飲食をしていますが、その食事を調理したのは3階の厨房で、そこから4階の宴会場に料理を運んでいたため宴会場の営業を行っても問題はないとの解釈でした。
 良く分からない理由です。さらに詳しく噛み砕いて説明すると次のようなものです。
 ホテルの4階厨房部分が営業停止処分となっただけで、食有毒が発生した会場である4階宴会場は処分の対象外であるため、他から食事を提供する限りにおいて食品衛生法に違反しないとするものです。つまり同じビル内、同じ経営者であっても、4階の厨房の営業と4階宴会場の営業は別物と判断するものです。食品衛生法上による飲食店舗への営業許可は、厨房に対するものだけが許可範囲で、食事場所は行政権限の及ばないものと判断している訳です。
 
 市の発表文では「当該施設での食事を原因とする食中毒であると断定しました」となっています。問題はこの次です。原因施設に関しては、業種「飲食店営業」。営業所の名称「宴会場」。営業所の所在地「当該ホテル4階」。措置「食品衛生法に基づく営業停止命令」となっています。
 営業停止命令を受けたのは、当該ホテルの4階宴会場。しかも飲食店営業なのです。決して厨房を営業停止命令したとはなっていません。
 この時に伺った和歌山市保健所の見解によると、「4階厨房で食中毒が発生したので営業停止となった。しかし3階の厨房は別許可なので営業は継続している。そのため3階厨房を使用し4階宴会場を利用するのは衛生上問題ない」とのことです。

 理解出来なかったので、更に詳しく聞くと、食品衛生法上、営業許可を出しているのは厨房に対してのものだと回答を得ました。「厨房に営業許可を付与する」との見解です。厨房に営業許可を与えているので、厨房を使用しなければ宴会場を使用しても衛生上問題はないというのです。食中毒に関する行政処分は、調理を行う厨房に対してのもので、客席に関しては行政処分の対象にならないというものです。つまり条件さえ整えば、厨房の営業を停止しても店舗は開けても良いというものです。
 
 ただ和歌山市として、今回の事例では「営業」を厨房の営業と考える解釈をしていますが、一般的には店舗での営業、つまり商行為を指すのではないかとも思われます。今回の営業停止処分の解釈によると、食中毒を発生させた厨房を使用しなければ出前であっても、あるいは別の厨房を利用してお客さんに食事を提供してお金を貰っても問題はないということになります。

 全国的には、ホテルで食中毒を発生させた場合でも、別の厨房を利用して宴会場で食事を提供している事例はあることはあります。ホテルの宴会場の場合、厨房と宴会場が隔離されている場合があり、食中毒の発生要因が厨房にある場合、宴会場を活用しても営業停止命令違反とはならないそうです。

 しかし、食中毒を発生させた場合、飲食店経営者は自らを戒める姿勢が求められています。それが食の安全を司っている人にとっての責任です。ですから万一、食中毒が起きた場合は、原因が判明するまで営業を自粛する姿勢を持つことが当然だとしています。
 全ての飲食関係者が口を揃えて、食中毒を発生させた場合は営業を自粛するのが社会的責任であると言います。店の信用もありますが、お客さんの健康を第一に考えた場合、営業行為をすることは許されないからです。仮に行政処分が許したとしても、社会的には営業行為をすることは見合わせると考えるのが筋道です。

 食品衛生法に基づく営業停止命令は、食中毒を発生させ店舗の衛生状態を改善させ再発を防止するために必要な期間、営業行為を停止させるものです。営業行為とは営利を目的として業務を行うことを指しますから、客席や宴会場を使用して利益を得ること自体が営業です。食中毒を発生させた厨房を利用するかしないかは関係ないとするのが飲食関係者の常識です。
 一般的に営業とは、営利目的で一定の行為を反復継続することを指しています。飲食店に当てはめると、料理を提供してお客さんから代金を頂戴するサービスを恒常的に行うことを飲食店の営業と言います。

 今回のホテル宴会場の食中毒による営業停止命令に関して問題となっているのが、厨房の使用を停止しても宴会場を開いている場合の法適用についてです。法律上の営業行為の定義からすると、宴会場を開いて料理を提供する行為は、どう考えても営業と思えます。和歌山市の言うところの、厨房の営業なんて聞いたことはありません。

 まして法律の精神からしてもおかしいのです。食品衛生法はその第一条において「食品の安全性の確保のために公衆衛生の見地から必要な規制、その他の措置を講ずることにより、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、もって国民の健康の保護を図ることを目的とする」と定められています。

 あくまでも国民の健康をその守るべき価値としているもので、決して飲食業を営むものの利益を優先させることにはなっていません。この法律の精神に基づくならば、食中毒を発生させた事業者に対しては、仮に同じ建屋内の別の厨房を使用して調理しているからと言って営業行為を認めるとの解釈は断じて出来ない筈です。私達は営業している飲食店舗を信頼して食事を摂るのですから、厨房の営業を停止しているとしても宴会場を営業していれば利用してしまいます。これが市民の健康を守るべき立場の和歌山市が取るべき行為だとは到底思えません。
 まして企業の社会的責任、コンプライアンスの遵守が問われている時代です。和歌山市の指導としては、厨房の営業の許可を与えているとしても、宴会場の利用を自粛するように求めるのが行政機関の取るべき態度です。

【質問】
 その観点から質問いたします。
 ひとつ。営業停止を行う法的根拠は食品衛生法第55条です。この法律の目的と条文「営業」の言葉の持つ意味について解説して下さい。
 
 ふたつ。市民の食の安全の確保と、市民の健康を守る方向で法の適用と行政処分を行う必要があると考えます。また、厨房への営業許可という解釈により和歌山市の食中毒における営業停止命令を出した事例で、店舗営業をしたのはこれが初めてのケースです。今回の対応に関して市の考えをお示し下さい。


【答弁】
有本福祉保健部長
 食品衛生法の目的は、食品の安全性の確保により、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、国民の健康の保護を図ることを目的しています。
 食品衛生法上に規定する営業とは、「業として食品若しくは添加物を製造、調理、販売等をすること」を意味しています。
 
 ご指摘のホテルについては、食品衛生法の規定による営業許可は8施設となっており、それぞれの施設の形態に基づいて許可しています。今回の食中毒の原因施設については、そのうちの1施設であり、飲食店営業における「仕出屋」と同様の形態で、調理施設部分だけの許可になっています。宴会場部分については、日常的に式典や会議等さまざまな催事に利用する施設であるため、食品衛生法の対象外と考えています。
 従って、対象施設の営業停止期間中であっても他の独立した許可施設がある3階厨房やその他の食品営業施設からの仕出しの受け入れも可能であり、この点に関しては、食品衛生法上支障のないものと考えられます。
 しかしながら、市民の食の安全確保と市民の健康を守る意味から、市としてより一層的確な法の運用を心掛けてまいります。
 以上

 2.質問(1)再質問内容・答弁へ


平成18年12月 和歌山市議会一般質問について


市議会一般質問 一覧へ戻る