平成17年6月29日(水)
C.平成17年6月
 和歌山市議会一般質問
 (2)内容・答弁
(2)法定受託事務制度について

 もうひとつの地方自治法改正の大きな課題は、機関委任事務制度が廃止されていることです。かつて、地方自治体の仕事の大半は国の方針に従うだけで仕事になっていました。  
 市民の皆さんから問い合わせがあった場合、県や国に問い合わせを行ない、その問題に対する見解と判断を仰いでいたらある程度仕事になったので、問題解決能よりも決められたことが出来る人材であれば事なきを得ていた訳です。
 あるいは、他の中核市の事例を調査し「他の中核市でもやっていますから」と一言返答すればそれ迄で考える必要もなかったのです。
 ところがその前提となっていた機関委任事務は既に廃止され、法定受託事務制度に移行しているのです。
 今まで通りか他の事例を調査するのかの選択肢が仕事の基本になっていたのですが、これらを無条件に受け入れるのではなく、自分の頭で考えることが大切になっています。細かいことを知っているのが自負であり誇りでしたが、今の時代は新しい事例や制度を考えて作ることが仕事上の誇りとすべき時代になっているのです。地方自治法改正に基づいた仕事と意識の変化が必要となっています。
 地方分権改革については平成7年5月、「地方分権推進法」が成立、平成7年7月に施行、
平成11年7月、「地方分権一括法」が成立し、平成12年4月から施行されています。
 ここでは、機関委任事務制度の廃止(自治事務と法定受託事務への整理)と国の関与の見直しが図られています。

 戦後新憲法制定時から平成12年3月31日までの期間、地方自治体の仕事は機関委任事務制度の下で運営されていました。簡単に言うと国の仕事を代理していたもので、大臣の通達に基づいて業務を執行していただけでした。大まかですか県レベルでは80%程度、市レベルでは50%が機関委任事務で、市レベルでは県からの再委任を加算すると80%に膨らみます。

 国は中央に権限を集中させ、全国一律の公平性と同一性を完成させる方向性に向かうこと、つまりナショナルミニマムを目的としていたため、その目的からすると必要な制度だったのですが、その制度の下では自治体経営の発想は殆どありませんでした。

 ところが地方分権一括法が施行された平成12年4月1日以降、中央集権国家体制から地方分権体制に移行していることを示しています。地方自治体の仕事の70%が自治事務となり、法定受託事務は30%に比率を下げています。初めて自治体経営が出来るしくみになったのです。
 地方分権とは予算と権限が地方に下りてくることですから、職員さんには政策立案能力が求められています。その能力が無ければ地方公務員としての仕事が出来なくなってしまいます。

 政策決定過程において重要なのは課題を設定することで、職員さんはその課題を見つけるための日常活動をすべきです。
 課題が設定出来たら立案に入りますが、これは行政のプロである正に行政職員の仕事です。単なる事業実施職員ではなく政策立案職員に変化する必要があります。指示通りに仕事を行なっていれば良いグライダー能力ではなく、自分で考え設計できる飛行機能力が求められているのです。

 どこの地方自治体の職場にも通達集や通知文が沢山あります。通達とは、上級庁から下級機関に示した行為準則のことで、平成12年3月31日までは法的拘束力がありました。しかし地方分権一括法施行により法的拘束力がなくなり通達の意味がなくなりました。過去、大臣の下に知事や市長が位置していましたが、現在は大臣と首長は対等立場にあります。もう大臣は対等である知事宛に通達を出すことが出来なくなったのです。
 では何故地方自治体には通達集が残っているのでしょうか。それはマニュアルとして使えてそれに沿った仕事をすれば良いので楽だからです。

 例えば、子どもの保育料金が高いので下げて欲しいと申し入れがあったとします。今までなら「申し入れはもっともです。しかし厚生労働大臣からの通達により料金基準が決まっているので、市ではどうしようもないのです」と対応出来ていたのです。
 しかし現在、地方自治体はこのような通達頼りの対応は出来なくなっています。まだこのような対応をしているところがあれば責任転化と言えます。地方自治体の職員さんの大きな問題として、中央集権的構造に依存してきた体質がややもすると残っていて、通達にはマニュアルとしての価値がまだあると思い込んでいることです。
 これらの対応は、機関委任事務の考え方そのものではないでしょうか。意識として法定受託事務の仕事になっていないようです。

 市役所が自由裁量を持つのであれば、可能である限り市民の皆さんからの要望に応えられるように法解釈する方向で調整を行なうことが裁量のある仕事です。古い通達に基づいた解釈を行い伝えることが職員さんの仕事ではありません。

 機関委任事務制度は廃止されているのですから、過去の通達に拘束されていないのですから和歌山市なりに頭で解釈して運用すべきこと、状況に応じて柔軟な解釈をすべきことです。それが法定受託事務制度における仕事です。

 意識改革の必要性がまだまだ必要です。法廷受託事務制度に変化している中での地方自治体の仕事のあり方について市長の感想をお聞かせ下さい。


答弁者 : 大橋市長
地方分権一括法により廃止された機関委任事務は,国の事務でありましたので主務大臣等の指揮監督を受けましたが,法定受託事務は自治事務と同じ地方公共団体の事務となったことから,国の指揮監督を受けなくなりました。
ただ,法定受託事務は,国が本来果たすべき役割に係る事務であって,その適正な処理を特に確保する必要があるため,従来の通達が廃止されたとはいえ,是正の指示等の国の関与が認められていることから,自治事務と同じような事務処理が難しいこともあります。
しかしながら,職員が自ら考え,自らの責任において事務を遂行することが自治事務においてはもちろんのこと,法定受託事務においても要求されていますので,このことを職員に更に徹底させていきたいと思います。
 以上

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