(1) 南海貴志川線問題
答弁をいただきましたので、再質問をさせていただきます。
貴志川線単体の収支に関する数値を示していただきました。非常に厳しい数値であり、存続の署名や乗客数増のアイデア提言に加えて、相当覚悟した取り組みが必要であると認識出来ます。南海電鉄を悪く言うつもりは全くありません。民間企業は市場原理で動いていますから、行政が存続を要望するだけでは、何も進展しないことを分かる必要があります。
さて、対策協議会で講じているアンケート調査は評価できますが、調査時期が如何にも不適切です。2月12日と2月27日ですが、既に高校3年生は入試のため電車を利用していない生徒が多く、本来の利用実態が明確にならないと思います。新1年生や新設される向陽中学校の生徒たちの利用状況が、調査に必要なデータではないでしょうか。
ペーパーでアンケートを取るなら4月に入ってから、または沿線の学校に協力をお願いして生徒にアンケート協力してもらう方法があります。
高等学校でも生徒の署名活動が行われ、2月末に署名が市役所に提出するなど大きな関心を持っています。高等学校では、パソコンを授業に取り入れています。ここにアンケートを送信して生徒に回答を入力してもらうことは、極めて簡単で有効な意識調査になると思います。ある校長先生も協力依頼があれば考えると言ってくれています。
貴志川線を欲していると思われる、交通弱者の高校生の意向を調査する気があるのか回答をお願いします。
それよりも、このアンケート調査が2月、結果は4月末では、如何にもスピード感に欠けます。行政も効率化のためにIT化を謳い文句にしていますが、掛け声だけで使い方を知らないのではないかとさえ思える調査方法です。
私の属している会では、貴志川線廃線問題が表面化してから直ぐに、会員向けアンケート調査項目を作成し、インターネットを通じたアンケート調査を行っています。行政が対策協議会を設立した時には、既にアンケート結果が集約され会員に伝えられています。
行政でも、 誰かリーダーとなりアンケートをまとめ上げITを活用すれば、もっと早く利用者の意向が分かり、スピーディに南海電鉄と協議に入れる筈です。物事が起きてから対応するのにスピードが無いことが、事態を進展させない原因だと感じます。
参考までにアンケートでは、廃止すべきだと答えた方はゼロ。出来れば補助金か第三セクターで維持すべきだと回答しています。仮に廃線となった場合、代替手段は誰が考えるのが適切かの問いに対しては、行政と地域住民が考えるべきとの回答が多く、代替意見も数多く出されています。
地方自治は住民自治の考え方が根底にあります。公共交通も私たちの問題として捉えなくてはなりません。
次に、今後の対策協議会の活動方針が不明確です。活動方針をしっかりと立てておかないと、活動にならないのではないでしょうか。
行政が存続の方向性を考えているのなら、まず、貴志川線は年間200万人が利用する通勤、通学、高齢者にとって不可欠な公共交通であると認識しておくことです。
そして、元気な中高年対策や教育のパワーアップなど、市長が進めようとしている和歌山都市圏の将来展望をした時に、鉄道は必要不可欠です。採算性の議論だけに囚われることなく、地方鉄道は地域全体の社会的インフラとして重要であり、和歌山市や貴志川町の経済圏においては、都市の装置として活用すべきものです。
その視点に立って、利用者増加に向けて具体的な取り組みを地域や学校、関係団体に提案していく必要があります。
利用者増加の取り組みとして、
職員の利用拡大、幼稚園、小中学校の遠足での利用、キャンプやボーイスカウトの活動での利用呼びかけ、があります。
積極的な誘客対策として、
百貨店や商店とタイアップした昼間時間帯利用者への「お買い物回数券」や、一定額以上の買い物客に、乗車券を進呈する対策があります。愛媛県の「いよてつ高島屋」と伊予鉄道がタイアップして実施しています。
貴志川屋形船、ほたる狩り、いちご狩りとのタイアップ商品の設定、沿線児童や小学校生徒の絵画作品を、車内や駅に展示する車内ギャラリーも考えられます。
市長が要望する予定のサイクリング自転車の車内乗り入れは、南海電鉄車内での職員提案制度で提言され却下されていますが、良いアイデアなので是非申し入れをお願いします。
持参式定期券や環境定期券、シルバー定期券、鉄道マニア向けの行事としては、鉄道用品や記念乗車券販売などがあげられます。
子どもに親しまれるキャラクターラッピング電車。既に全国では、ドラえもん電車、アンパンマン電車、パンダ電車が走り人気を得ています。
他にもありますが、少し鉄道に関係する人たち何人かで話し合いをするだけでも、このように様々な情報とアイデアが出てきます。
対策協議会では、利用促進のためのアイデアは出されていますか。既に設置されてから二ヶ月以上が経過しています。署名と同時に、利用促進の可能性がある案を出していくことが大切だと思います。現時点の利用促進案を示してください。
続いて、南海電鉄貴志川線の経営実態についてあまり把握していない様に感じます。実態が分からないと、対策を講じることは出来ません。
営業費用は約7億8,800万円、営業収入は約3億2,300万円。差し引き約5億円の経常損益です。営業費用の内、人件費は4億5,600万円を要している点が注目です。
要員は42人ですから、一人当たり年間約1,000万円となっています。民間企業のことですから、口を挟むべき筋合いではありません。ただ、人件費改善の余地はあると思います。
内訳では人件費の他に、減価償却費と修繕費の割合が高いように思えます。営業収入が3億円程度の同規模鉄道会社と、比率を比較することで健全さが分かりますので、是非比較調査して欲しいと思います。地方鉄道を鉄道以外の会社が引き受けて運営している例もあります。
しかし、 今公表されている収支だと、引き受ける会社も現われませんし、公的資金の支出も難しいと思います。
また、路線廃止の要否を決定する重要な要素である輸送密度は、貴志川線では3,127です。ローカル線の輸送密度の低い鉄道のワースト20位でも輸送密度は793ですから、専門家に聞くと、通常なら3,127も輸送密度があれば、廃線問題は浮かび上がることがないレベルです。JR西日本が廃線対象としている輸送密度は800です。貴志川線程の輸送密度で廃線になった事例はなく、廃線対象には成り得ない路線であることが分かります。
対策協議会で結論をどう出そうとしているのかは分かりませんが、南海電鉄に対して貴志川線に関する情報公開を求めるべきです。財務体質を明らかにした上でないと、第三セクターや補助金の話にもならないと思います。
一度、地方鉄道を研究しているコンサルなどにレクチャーを受けるなどして、地方自治体と地方鉄道とのこれからの関わりを研究してから、南海電鉄に対して意見提起すべきだと思います。
数値も把握していない、経営実態も良く分からないままでは、署名を持って存続の交渉をしても話しにならないと思われます。
今回示した対策案を対策協議会で論議していただくと同時に、南海電鉄から市民に対して情報開示を求めて欲しいと思いますので、その意思の有無をお答え下さい。
(2)行財政改革
地方交付税の大幅削減により全国市長会は、平成17年度には財政が破綻状態に陥る自治体が数多く出るとして、地方交付税の機能強化を求める緊急要望をまとめています。
しかし財務省は、地方財政の合理化はまだ不十分と見解を示し、食い違いを見せています。どちらが正しいのか、私たち市民にはまったく分かりません。市長は、国の言い分と地方財政の現状をどう捉えているのでしょうか。まず、お答えをお願いします。
次に、答弁いただいたように政府方針が固まらない中、財政の収支見通しが立てにくい状況にあることはある程度理解出来ます。しかし、そうであるなら中期計画との兼ね合いが問題になってきます。財政面の裏づけがないと、市長が進めようとしているまちづくり計画を進められません。つまり財政の担保がない計画は、机上で作られたものに過ぎないからです。
平成14年度から平成17年度までの「和歌山市の行政改革」が策定されています。しかし、財政問題が不確定で一年先の見通しも出せない中、この計画の正当性を検証出来ていないままです。
中期計画を必要とするのであれば、市の人口減少、高齢化進展、歳入不足を見込んだ上で策定し直す必要があると思いますが、市長の考え方をお示し下さい。
歳入の見込み値が確定出来ない中で、この中期計画はどのような位置付けになっていのか良く分かりません。計画は財政とリンクさせることが鉄則です。
しかしこの行政改革「報告書」によると、財政効果約43億円の削減を見込んでいますが、内訳を見ると約34億円が長期計画分となっています。平成17年度までの削減見込みは、わずか9億円です。長期計画分で、削減効果が見込まれるものの大半が人件費で、他に重要項目の外郭団体の経営健全化になどがここに含まれています。今の速度では改革の実現性は疑問視されます。
外郭団体の健全化についての記述は「経営の健全化を図るとともに、外郭団体職員の意識改革及び能力開発により効果的な活用を図る」です。さて、外郭団体をどうするのか不明です。
本気で改革をするのなら、期限を見込まない「長期」には分類しない筈です。平成17年度までの計画なのに、その期限までに見直しを含めない「長期」を含めている理由が不明です。この点についてお答えください。
行政改革とは、大きなところから、難しいところからまず始めるから改革なのです。それを先送りしていては行政改善に過ぎません。ですから行政改革は、困難でも効果の大きい市役所内部から取り掛かるべきです。
平成19年度には、約60億円の支払いが生じる退職金の問題です。
退職金のピークが、団塊の世代が退職の時期に発生することは予想出来たにも関わらず、基金などの形で準備できなかった理由は分かります。退職金よりも市民サービスをまず充実させるべきという意見もあり、市内外の理解を得るのは難しい問題だからです。
将来の財源構造健全化のために、金額の予想が容易な退職金の支出を平準化することが大切です。そのために、退職手当債を活用したら如何でしょうか。退職手当の特例を認めている退職手当債の性質からも、財源確保の手段として単なる赤字債とは区別されています。
年度毎の退職者数、新規採用者数、退職金額、財源の情報公開することで、人員削減努力が分かり、財源を示すことで、必要な退職金について理解が得られると思います。
ある年度の退職金の突出を防ぎ、退職金への理解を求めるためにも、退職手当債を活用も有効だと思いますので、見解をお示し下さい。
加えてこの計画では、 財政問題の大きな課題である土地造成事業や下水道事業に言及されていません。仮に、この中期計画を計画通り遂行出来たとしても、これらの課題を解決できなければ何十億単位の借金が表面化し、財政再建団体に転落するのではないでしょうか。
問題解決にはパレートの法則を当てはめ、大きな原因から取り除く必要があります。市長の方針とも言えるこの計画で、大きな要因には触れずに行政改革をする方針なのでしょうか。
この計画の不完全さについての説明と、収支不足が予想される中で見直しの意思はあるのかお答え下さい。