コラム
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2010/12/21
851  5分間

ベテランの人から学ぶことは本当にたくさんあります。80歳を超えた知り合いの経営者Tさんは今も現役で走り回っています。今まで多くの部下と仕事をしてきたのですが、若い人に伝えてきたことがあります。それは仕事を終えた後の5分間を大切にすることです。通常、仕事を終えると片付けに入りますが、そうしないで5分間書類を見返すことや机の周囲を清掃することを心掛けるだけで、仕事の内容が違ってくるというものです。

自分が作成した書類を見返すことは意外と労力を要するものです。しかしたった5分間、見返すことで修正点を見つけることができます。その場で修正しておくと、それが輝く企画書や報告書になるのです。

もしその日に見返す書類がなければ、5分間だけ机を拭いたり、片付けたりしておくことです。周囲の机と違って輝いて見えるようになります。わずか5分間の差が周囲との違いになるのです。

Tさんは、「1時間の仕事に後5分付け加えることによって仕事の中身が変わります。1時間分の仕事が、2時間分の仕事に変化します」と付け加えてくれました。

同じようなことを思い出しました。若い頃、会社に厳しい上司がいました。その方からは、常に「作った書類は必ず見返すように」と指導を受けました。自分の作った書類を見返すよりも次の仕事に取り掛かりたいと思う気持ちがあるので、どうしてもやり終えた書類の再確認を怠ることがありました。そうすると直ぐにその書類の要点などに関して質問がありました。つまり自分で書いただけのものは相手に伝わらないのです。自分で書いた書類を他人の視点で読み返すことで、相手に自分の意見や主張を伝えられているか分るのです。

自分の視点で書類を書く、そして他人の視点で自分の作成した書類を読み返すこと。これが書類を作成する時の基本です。

不思議なもので、見直しして修正をしないで済んだ書類の決裁を受ける時には指摘がありませんでした。しかしそれを良いこととして、手を抜いて見直しをしないで決裁を受けようとした書類は質問攻めにあいました。経験した人には他人の視点を含んだ文書になっているかどうか分るのです。

「手を抜いた文書は直ぐに分るものだ。仕事に真剣に取り組んできた人間を誤魔化すことはできないと覚えておくように」と指導されたことを思い出しました。

若い頃は分りませんでしたが、一級品の仕事を経験した人の視点は半端ではなく、小細工で誤魔化せるものではありません。仕事を仕上げてから5分間で良いので見直すことが、経験者に少しでも対抗できる方策となるのです。後5分間を耐える習慣が、仕事の成果を二倍にしてくれます。

1時間の仕事が2時間の仕事に変化させる秘密は、1時間プラス5分間にあるのです。1時間5分で成果が倍増することを覚えておきたいものです。