コラム
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2010/12/23
852  そろばん

私と同じ年代、1960年代生まれの人は、小学校時代にそろばんを習った経験のある人が多いと思います。現在もそろばん教室がありますし、計算力を身につけるために必要なアイテムであることに変わりはありません。読み書きそろばんは日本人の基礎力であり、そろばんを身に付けることは計算機を頭の中に内蔵させることになります。

そろばん教室のY先生と会い、懇談する機会をいただきました。Y先生はそろばん10段です。10段の凄さのイメージは沸きませんが、先生が10段の資格を得たのが二十数年前のことで、和歌山県で10段を取得した人は初めてでした。以降、今日まで20年以上が経過していますが、その間に10段位を獲得しているのはY先生を含めてわずか4人です。

数字で表すと、その凄さが分かります。ある意味、東京大学に合格するよりも難しいことのように思います。

そろばんで10段を目指すためには何が必要か訪ねました。答えは練習量だったのです。基本はそろばんの練習を毎日3時間継続することです。しかも一日3時間の練習は最低ラインで、土曜日曜、祝日は一日中練習を行うそうです。一日中とは8時間程度のことを指しています。

そしてそろばんの強豪校の夏休みの練習は半端ではありません。朝5時からそろばん部の練習が始まり、昼食を挟んで練習を再開。そして夕食をとった後も練習を続け、午後9時頃に一日の練習を終えます。朝5時から夜9時までがクラブ活動なのです。体育会系の練習量です。かつて和歌山市立雄湊小学校が全国大会三連覇を達成した歴史があることを知りました。その当時の夏休みの練習は、そのスケジュールだったと聞きました。

それだけ練習して全国で戦えるレベルに到達します。しかし個人レベルでは、それでも全国で100番程度のレベルだそうです。それでも凄いことですが、その上の日本一を目指すとしたらの質問に対しては、和歌山県で日本一を目指すことは不可能なこと答えてくれました。理由は日本一になるためには日本一を目指せる指導者の存在と素質のある子どもの存在が不可欠だからです。残念ながら和歌山県には日本一の指導者がいないのです。そして仮に素晴らしい指導者が存在したとしても、素質のある子どもと出会う必要があります。優れた指導者と素質のある子どもが出会う確率はとてつもなく低いので、現実的には日本一を目指すことは困難なのです。

何事もやればできますが、奇跡が起きない限り現実的には達成不可能なこともあります。

そろばんの練習量や日本一を目指す取り組みの道のりを聞くと、そろばんは格闘技に見えてきました。

そろばん力は計算力の養成にもなりますが、子どもの集中力を高めることにも威力を発揮します。そろばんを習った人は分かると思いますが、「よーい、はじめ」の掛け声と共に一気に精神を集中します。計算中の時間は雑念が消え、そろばんだけに集中することになります。一気に集中力を高められることもそろばんの特長です。