同級生の言葉です。「そうだね。今の私にとって、髪の毛は全部抜けているので、高価な品物よりもウィッグの方が大切です。友達も応援して買ってくれたのですよ。40万円もしたのです」と笑いながら答えてくれました。
「次の抗がん剤治療は5月21日なので、26日の同窓会は片桐君に会いに行きたいけれど、行けないと思う。抗がん剤治療の副作用はしんどさが続くので行けないかな」と言うので、「それなら5月20日に会いましょう。国立市だったら中央線で行けるから」と伝えました。
「ありがとう。でも新宿まで出ていくから。抗がん剤治療の前日はしんどくないので、新宿までなら車を運転して行きますから」と答えてくれました。
「小さい頃から本当に変わっていないなぁ。どんな時も前向きで輝いているよね。みんなに好かれているのは、どんな時も周囲に心配を掛けないように明るくしているから」と思いながら話をしていると涙が零れそうになりました。
「腹膜癌は珍しい癌で、もう全身に転移しているから治らないかもね。元々体は細いからみんなからは分からないと思っているよ。親しい人にしか話していないので氣づかないと思う」との話です。
覚悟というには簡単すぎるように思います。言葉には出さないけれど、きっと悔しさがいっぱいだと思います。「悲しくはなかったけれど、まだまだやりたいことがたくさんあるのに」の言葉は胸が痛みました。人生の集大成に時期に入っていく途中でもステージ4の宣告は、頑張っている人にとって残酷すぎます。
これまでも「今、和歌山市に帰っているけれど会えるかな」だとか「韓国の歌手を呼んで東京でコンサートを開催しました。和歌山市でもコンサートをやりたいので協力してくれる」「東京に来たら連絡して。飲みに行きましょう」「私の友達が和歌山市に行くのでお相手をしてくださいね」など、突然の相談や話がたくさんありました。その都度、応援できたのはその人柄と幼稚園の時からの長い付き合いだからだと思います。
「幼稚園から高校まで一緒だったのは片桐君だけです。凄いことだよね」という間柄で、他にはいない存在です。
これまで飲みに行ったりコンサートを企画したりと、余りにも当たり前すぎる出来事が、現在進行形から突然に過去の出来事に変わってしまった感じがしました。「まだ一緒にやれることがある」という確証のない思いが、突然に崩れてしまったように思います。
「いつでも一緒にやれる」と、当たり前のように思っていたことが、当たり前ではなかったと氣づいた瞬間でした。人生に与えられている時間は限られていることは頭で理解はしていますが、現実のものになると気持ちが揺れ動きます。同級生がステージ4の癌になっている現実ですが、突然過ぎて現実とは思えないのです。
今さらですが「誕生日は何時だったかな。令和6年の誕生日のお祝いを考えなければ」と思います。長いつきあいの中で、これまで一度もお祝いしたことがなかったことに氣づきました。人生でやるべきこととは。考えています。