コラム
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2014/8/8
1514    社会で役立つ

ブラウン大学の廣井孝弘先生の話を聞かせてもらいました。東京大学からブラウン大学へ、そして米国科学アカデミー研究員としてNASAジョンソン宇宙センターに赴任し、その後ブラウン大学に戻り研究員となっています。日米の架け橋としてJAXAのはやぶさ計画の共同研究者として活躍しました。現在もブラウン大学惑星地質の上級研究員として、またJAXAのはやぶさ2の主研究者グループの一員として活躍しています。そんな廣井さんと社会で役立つものについて話を交わしました。

現代においても宇宙のことは分からないことばかりです。そんな分からない分野に挑戦するということが学問です。解が示されていないものに挑戦して、解を求めようとすることが学問であり真に社会で役立つことです。社会で役立たないものを追求しても、解があるものの答えを社会に公言したとしても、それほど価値のないことです。

学校で学ぶことは予め解がある問題ばかりですから、そのままでは社会で通用しません。尤も、勉強に意味がないと言うものではありません。 未完成な人が成長していくためには、勉強をすることによって知識を身につけていくことが絶対に必要で、それをしなければ社会で通用する人間にはなれません。しかし学校で学ぶことは先生が答えを用意してくれていますから、勉強をして解き方が分かれば正解に辿り着けます。

しかし社会で出会う問題には解が用意されていません。解を求めること、そしてその解がどんな場合でも反復して出現することを証明しなければ、社会で通用するものにはなりません。偶然出現したものや、条件があえば時々発生する事象というものは、普遍性がないので社会で安全に活用することはできません。

例えば自動車はブレーキを踏むと車は確実に停止することが分かっているので、安心して運転することができます。もしブレーキを踏んでも、ごく稀に停止しないことがあれば危険極まりなく、商品として実用化されることはありません。

エクセル使用して計算しますが、それは必要な計算式を入力しておけば確実に正確な答えを返してくれます。何百回、何万回と繰り返しても間違いがないから利用しているのです。もしエクセルで計算式を組んでも1万回に一回程度計算間違いが発生するソフトだったら、社会で普及することはありません。

社会で通用するには条件を同じにすれば同じ成果が現れる公式であり技術です。そのためにはその公式や技術が、望んでいる答えを確実に導いてくれることを証明する必要があります。それが社会で通用する学問なのです。

宇宙に飛び立つ技術は高いレベルで確実なものが求められます。大学でも、NASAでも、先輩の技術者でも、答えは用意してくれていません。自分が担当する仕事の答えは自分で見つけ、それが正しいことであることを証明しなければならないのです。

このことは、宇宙に関係のない仕事をしている私達にも参考になります。社会で答えは用意されていないので自分で答えを見つけること。その答えが正しいかどうか分からないので、正しいことを証明することが社会で役立つということなのです。これが学校の成績が社会で関係がない理由です。社会で役立つ人間になることを目指した仕事をしたいものです。