コラム
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2014/3/7
1423    見えない仕事

現役を終えた先輩から、自身が経験したことを伝えてもらえるのは嬉しいことです。経験を伝えようと思ってくれるのは、「私の話をきっちり聞いてくれる」と思うからであって、聞く姿勢のない人や聞いても活かしてくれないと思う人に対して、アドバイスはしてくれません。その理由は簡単で、貴重な時間を割いて話をするのですから、真剣に聞いてくれる人にだけその時間を使いたいと思うからです。事業をやりとげて引退した人は時間が有限であることを誰よりも知っていますし、無駄な時間の使い方はしないからです。

仕事は見えないところが大事であるということです。料理にも仕込みの時間が必要ですし、スポーツでも練習の時間が必要です。出来上がった料理、スポーツの試合ではそれまでの過程は分かりませんが、その前段の努力がなければここにいられないことを、お客さんや観客は知っています。

私達は出来上がったものに関しては完成形を求めますが、そこに至るまでのドラマがあることを知っているのです。自分ではできないことをやってのけたアスリートに人は感動するのです。

仕事もそれと同じです。見えないところで仕事の下地を作る必要があります。優秀な秘書であれば、担当役員が使う料理店の雰囲気やメニューを把握しています。打ち合わせの内容や誰と行くのかによってお店を使い分けます。そのためにはお店を知っておく必要がありますし、経営者やお店を預かっている人と親しくなることも必要です。

まだ役職になっていない時、議会担当をしていたそうです。議員や議会事務局の方と話ができる関係を構築していたのは当然のこと、警備の職員さんとも親しい関係を作っていました。議会でまとまらない時や審議に調整が必要な時は、いつ再開するのか見通せない時があります。長い時間を県庁でいることは時間が無駄になります。会社に戻っている間に議会が再会されて話が済んでしまうと、議会での話し合いの内容の報告が遅れることになります。

そこで議会が休憩時間に入ると、警備員さんに依頼して会社に戻ったのです。議会の再開時間が決ったら、警備員さんが再開の時間を知らせる電話をくれたそうです。そこまでの親しい関係を構築するためには時間と信頼されることが必要です。事務的な付き合いではなく人としての付き合いをしていたことだと思います。

そして役員の秘書は上から目線になることがありますが、高いところにいると情報は入って来ないことも教えてもらいました。情報は水と同じように低いところに流れ込んできます。自分が高いところにいると情報は集まってこないのです。周囲よりも姿勢を低くしておくこと、社内外を歩いて皆さんと雑談することで情報は集まります。時間に余裕のある時に雑談できる人を有していることが情報を得るために必要なことです。

重要な情報は雑談できる関係の人から、雑談の中から集めることができます。難しい顔をして机に座り続ける人のところに情報は集まってこないのです。

これらの仕事は全て見えないところの仕事です。見えないところで動いていることが、本当に役に立つ仕事なのです。見えない仕事ができる人は、ある程度の見通しが立てられるので大きな問題は起きませんし、仕事を見える化しても上手く進みます。見えない仕事ができる人でありたいものですし、見えない仕事を大切にしたいものです。