コラム
コラム
2014/2/24
1414    浅田真央選手

ソチオリンピックの女子フィギアスケートの浅田真央選手に感動です。ショートプログラムでのジャンプ失敗による16位スタート。演技終了後の表情は強張っていました。もう涙が出そうでした。そして眠れないほどの怖さで、眠れない夜を過ごすのではと心配していました。浅田選手はフリー演技を終えた後のインタビューで「自分も怖さと、逃げ出したい気持ちとあした(フリーは)大丈夫かなって気持ちがあったんですけど、何とか頑張って立て直すことができました」と語っていますから、きっとフリーに出たくないほどの恐怖心と闘ったと思います。

そしてフリーは完璧な美しさと感動の演技でした。演技を終えた後の涙を堪える表情を見て、こちらの方が涙が出てきました。きっと心が切れそうな状態で、世界が敵に回ったような恐怖心で、自分に自信がなくてという状態になっていたと勝手に想像しています。翌日のフリーは大丈夫かな、元気に滑ってくれるだけで良いと思っていました。

そしてフリーの演技は見事に精神を立て直して、これまで見たことのない最高の演技を見せてくれました。どんな得点を出した選手よりも、金メダリストよりも素晴らしい感動の滑りでした。

メダルを獲得しただとか、得点がどうだとかなどを超越した感動の演技でした。価値があるのはメダルではなくて、自分が演じられる全てを出せるかどうかです。ソチを目指した直近の4年間、そして競技を始めてからの10年以上の年月の重みが、フリーの演技に凝縮されていました。人生を賭けて挑戦してきた長い年月を、わずか数分で出し尽くすことが求められるのがオリンピックです。とてつもない緊張と不安に包まれるはずです。

そこから立ち直っての感動の演技ですから、日本中が浅田選手を応援していました。

失敗を乗り越える勇気、立ち向かう勇気、不安を克服した勇気。人は大切な勝負をする時に、勇気を持てないことがあります。失敗するのでは。負けるのでは。そんなことを考えてしまいます。でも人生は勇気を持って挑戦することだと教えてくれました。

人の失敗を期待するほど人格を落とすことはありません。人が失敗をして自分がその上に行くことを望むことほど哀れなことはありません。男子フィギアスケートの羽生選手のインタビューが凄かったことを思い出しました。ライバルのパトリック・チャン選手のフリーの演技をどう思って見ていましたかという質問に対して、「応援していました」と答えたのです。チャン選手が良い演技をすれば、羽生選手が二位に転落する可能性があったのにも関わらず、ライバルの演技を応援して見ていたのです。そこには「ライバルには失敗して欲しくない」、「競う相手の完璧な演技を見たい」という、アスリートとしての誇りがあったと思います。

相手の失敗を願うのは二流以下ですが、相手の成功を思うのは一流の領域です。浅田選手の失敗を乗り越えたフリーの演技は一流の証ですし、それを純粋に応援した私達は一流の魂を有しています。メダルよりも価値のあるものがある。それは努力を続けることと、失敗に立ち向かう勇気を持って挑戦することです。感動には成績や順位は関係ないことを知りました。練習で不断の努力を続けることと、試合でベストを尽くすことが感動を呼ぶのです。

世界で最高に輝いたソチオリンピックでの6位です。浅田選手、おめでとう。