コラム
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2012/11/19
1145    思いを纏める

和歌山城の歴史について自費出版をしたのがMさんです。出版前の段階で内容を見せてもらいましたが、私が知らない和歌山城の歴史と現代でも魅力的なことが分かる読み物になっています。読みながら話を伺うと、ここに至るまでの奮闘ぶりが分かりました。

自分の知識と経験だけで本を発刊することは難しいと思います。それは自分中心の内容になると中身が小さくなるように感じるからです。

そこでMさんは取材にも出掛けています。和歌山城のことを知るために名古屋まで出掛けてインタビューを行っています。紀州と尾張は御三家で関係が深く、紀州に残されていない文献があったり、和歌山城に関係した人の子孫が住んでいるようなのです。そんな方を探してインタビューを行うことで内容が広がりを見せています。記事の幅が広くなり内容に厚みが増しています。

このように他者の意見を聞くことや、話の内容や思い出話、考え方を取り入れることによって中身が濃くなるのです。一人の考えよりも多くの人の考えを取り入れることで、内容が充実していくのです。

同じように防災について研究している人がいます。防災訓練も研修会も自ら実践していますし講演活動も行っています。他の地域からも防災の取り組みについて取材に来るほどですが、今でも先進事例があれば出掛けて取材をしています。自分に必要な知識や技術を見つけると、そこに出掛けて取材を行い、自分の取り組みに付け加えているのです。そのことによって防災対策が充実してきますし、講演会の新しいネタにもなります。

他の人の意見を聞いて自分の中に取り入れることは、考え方の幅を広げ、知らない知識を得られるなど、とても大事なことなのです。

二人に共通していることは、本の出版と防災資料の作成に当たって、それらの意見を付け加えていることです。自分の提言の裏付けにもなりますし、自分の専門以外のところを補完してくれることになります。何よりも多くの人に関わってもらうことで、内容に厚みが増してきます。個人が知りえているだけの情報を取り上げることによって、歴史の埋もれた部分を私達が知ることができます。

防災対策に関しても、その地域で取り組んできたノウハウを好事例として紹介することで、これから防災対策を検討しようとしている多くの人に伝えることができます。

一人の知識や知恵よりも複数人の人の知識や知恵を取り入れる方が、良いものに仕上がるのです。知識、行動、経験、そして他からの意見がやろうとすることに厚みを持たせてくれるのです。

和歌山城に関して自分が知っていることだけを並べるよりも、多くの人の経験や関ってきた人の話を取り入れることで分散していた経験、または消え去ろうとしていた思い出や取り組みがひとつに纏められ今までにない本という姿になるのです。

Mさんが出版しようとしなければ、これらの経験や思い出は和歌山城物語として後世に残らなかったのです。本を出版するということは多くの人の思いを残すことになるのです。