コラム
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2012/11/20
1146    挑み続ける

歌の教室を主宰している歌手のMさんがいます。コンサートには何度か行っていますが、その歌声と表現力は素晴らしく毎回感動を与えてもらっています。Mさんを知る方から次のような話を伺いました。

「Mさんは毎月、大阪まで出て歌のレッスンを受けているのですよ」。

どれだけ経験を重ねても、どれだけ歌えたとしても、先生に付いてのレッスンが必要だと言うことです。自分で一定のレベルに達したとしても、そこで教えてもらうことを止めたら、そこからの進歩はなくなります。レベルを維持し向上させるためには先生に付いて学ぶことが欠かせないのです。それは自分が教える立場になったとしても同じで、教えるためには常に学び続けて向上しなければならないのです。

歌のレッスンの場合、自分が気付かないところの指摘を受け修正していくこともありますし、どの分野でも進歩していますから、常に新しい技術を学び続ける必要があるのです。

新しく学んだことはコンサートで活かし、そして教室では生徒に伝えることになります。同じことを教えているようでは生徒に進歩はありません。生徒を伸ばすためには先生も成長し続ける必要がありますし、教えるためには学び続ける必要があるのです。

華やかなコンサートの影にはそんな取り組みがあるのです。

同じように別の歌の先生についての話も伺いました。全く同じ「A先生も毎月大阪までレッスンに通っていますよ」という内容でした。先生と呼ばれる人は常に学んでいるのです。

本人に会っても、毎月レッスンを重ねていることは言ってくれません。プロ意識の持っている人は、厳しい練習のことは他人に話をしないものなのです。プロだったら人の何倍も練習することが当たり前だと思っているからです。

成長を続ける人にとって壁は高いほど良いといいます。壁が低ければ多くの人が乗り越えるので他と差はつきません。どれだけ乗り越えても低い壁ばかりだったら自分が先に行くことはできないのです。自分と同じように多くの人が低い壁を乗り越えていくからです。

ところが壁が高いと、最初は大勢の人がいても乗り越えられない人、諦めてしまう人がでてきます。高い壁を乗り越えれば差は広げ易いのです。高い壁であればあるほど他人は追ってこないのです。こうしたプロ意識を持っている人は、高い壁がいくつも出現してくれることを望んでいるようにも見えます。

高い壁が何重にもあるということは、自分が挑み続けることで他人と差を付けられることでもあるのです。低い壁をどれだけ容易に乗り越えても、どこまで行ったとしても立つ位置は同じです。高い壁を乗り越えるほど、次の壁を突破しようと挑戦する人数は限られてきます。競争相手が少なくなれば、最初の壁に向かう時ほどの負荷は掛からなくなるのです。

歌手のMさんが高いレベルのレッスンを続けているのも、高い壁を乗り越えること経験を持つことで、生徒にも高い壁を乗り越える方法を伝え、挑戦する勇気を与えられるからです。毎月のようにコンサートを行っていますが、毎回違った歌声を聴かせてくれます。その影には挑み続けている姿勢があるのです。