紀三井寺の境内にある春子稲荷社前に壁を造り、そこに春子姫の伝説を伝えるために壁画を制作していましたが、完成したことからお披露目式が執り行われました。制作者の田村画伯から案内をいただき式典に参加しました。同時に春子稲荷社の前に春子姫と白狐の像も建立されたので、お披露目してくれました。
紀三井寺の前田貫主は「紀三井寺には春子姫伝説が伝わっています。今年の大河ドラマは豊臣兄弟なので、秀長が築城した和歌山城が登場すると思いますし、それに関係する春子姫伝説も知ってもらいたいと思い、この伝説を壁画にすることにしました。田村画伯に相談したところ、『やりましょう』ということになり制作してきましたが、この度完成しました。
秀長が和歌山城を築城した時から『紀州から和歌山』への名称も変わった節目の年になります。大河ドラマで和歌山城が取り上げられることになれば、今年は和歌山県にとっても節目の年になるかもしれません。皆さんに春子姫伝説を知っていただき、新たな名所になれば良いと思っています」と説明してくれました。
制作した田村画伯は「話を聞いて制作しようと思いましたが、伝説の人物である春子姫はどんな人だったのか、どんな顔をしていたのかも分からないので、想像してイメージを創り上げることが大変でした。性格や顔の記述がないのでイメージが難しい人物でした。貫主と話を交わしながら何度も顔を描き直しました。一緒に制作してくれた渡里さんが表情を創りあげるのに大変ご苦労してくれました。そうしてイメージして仕上がった春子姫を壁画で描きました。
現代の世界は戦争が起きています。アメリカによるベネズエラの大統領の拉致やロシアとウクライナの戦争、イスラエルとガザの紛争、そしてイランなど、各地で争いが起きています。そんな今だからこそ、豊臣軍の紀州攻めに対して春子姫が白狐に化身して秀長に書状を届け、それを読んだ秀長が禁制を書いたという伝説を壁画にしたことは意味があると思います。この禁制には『紀三井寺の境内では誰も乱暴な振る舞いや放火をしてはいけない』と記されていたのです。
春子姫が争うことなく紀三井寺を護った伝説は、世界平和を願う日本国民に知ってもらいたいと思います。私は命がある限り、この壁画を修正するなど守っていきます」と話してくれました。
紀三井寺が秀吉軍の侵攻によっても焼かれることなく、現代にその姿をとどめているのは春子姫が護ったと紀三井寺に伝わっている伝説です。今回完成した壁画の春子姫伝説が、私たちに平和を護るために命を賭したことを伝えてくれることになります。この伝説は日本人が争うことをよしとしない心を持っていて、それは祈りによって護られていることが理解できるものです。
春子姫伝説では「春子は般若心経を唱え始め、彼女の声が決意を秘めた雄叫びとなった時、突然、本尊・観音様の脇からあの白狐が飛び出し、火花散らす戦場へと走っていった」と伝えられていることが証拠です。
壁画に込められた願いをお二人から聴くことができ、春子姫伝説と共に世界平和を考えることになりました。この壁画を訪れた皆さんが世界平和を考えることにつながるような観光拠点になれば良いと思います。
前田貫主は「この伝説を後世に伝えるために画家、左官職人さんにお願いして、造立することができました」と語ってくれた言葉の中に、世界平和の祈りと平安への願いが込められています。
名草山の中腹にある紀三井寺なので屋外での式典に寒さを覚悟していましたが、寒くもなく冷たい風も吹かないお披露目式に絶好のお天気でした。これは私たちが護られていたかも知れません。
何とも素晴らしいお披露目式の案内をいただき、春子姫伝説が壁画で蘇える大切な式典に参加できた幸運に感謝しています。


