活動報告・レポート
2025年8月13日(水)
先輩の記憶

お盆のため、お世話になった皆さんに挨拶に伺いました。皆さんとの思い出話や残されたご家族の方々と話をすることができました。

会社時代のY先輩を訪ねた時のことです。

「主人は今年8月2日に入院しました。肝臓癌が見つかったので診てもらったのですが、その時『残念ながら二か月です』と宣告を受けました。突然の宣告に驚きましたが、主人は即座に抗がん治療を拒否し、治療を行わないため即日、緩和病棟に入ることになりました。ところが8月7日に容態が変化して亡くなったのです」と伝えてくれました。

ご家族が話してくれたのは「余りにも早すぎて信じられませんでした」「肝臓内に癌細胞が散っていたので、レーザー治療が効くかどうか分からなかった」など、突然の悲報に心構えが対応できなかったことです。

振り返ると私がY先輩と出会ったのは、先輩が30歳代前半の頃だったと思います。

笑顔がある親しみやすい人で小さなことは氣にすることなく対応してくれ、そして声が大きい人でした。

当時、会社が導入した業務の「品質管理」、いわゆるTQCでは、社員教育の講師を務めてくれるなど、社員教育を担当していた私の依頼に、嫌な顔をすることなく応えてくれました。人は誰でも自分が担当する仕事以外のことを依頼されると嫌なものですが、先輩はテーマに即した教育内容の打ち合わせや、テキスト作成などにも協力してくれた記憶があります。

この教育は毎月一回のペースで行っていたので、教育テーマの選定とテキスト作り、教育当日とアンケート評価。アンケート評価に基づいて翌月の教育テーマを決めて、そのテキスト作りを行うというサイクルで、本来業務に加えての負担が大きかったように記憶しているのですが、それでも引き受けてくれていました。有難いことだと感謝していました。

そして先輩は、後に和歌山県主催の「世界リゾート博協会」に出向するのですが、和歌山県で初めての博覧会開催で準備が大変だったと思いますが、電力設備担当で博覧会に関わったのです。何度か同協会を訪れたことがありますし、開会後も何度もお会いしていました。

後に私も和歌山県主催の「南紀熊野体験博」に出向することになるので、県に出向した時のアドバイスもいただくことになります。「世界リゾート博」は和歌山県の海のリゾートをテーマにしたものに対し「南紀熊野体験博」は熊野の森や山を舞台とするリゾート体験をテーマにしたものでした。どちらも和歌山県がリゾート県であることを全国に発信した博覧会で、当時、「地方博覧会の成功事例」と評価されました。和歌山県が主催した二つの博覧会に関わったというご縁でつながりました。ご縁は異なるものですが、とても大事なものだと思える関係でした。

思い返すと先輩との懐かしい小さな記憶が蘇ってきます。このような小さな記憶があることを嬉しく思いますし、日常における小さな出来事がたくさんあることが人間関係につながっているのだと思います。

先輩はその後、グルーブ会社に転籍した後に定年退職を迎えました。退職後も自宅を訪問していたのですが、いつも笑顔と励ましで迎えてくれました。

私のことが掲載された新聞や議会報告などを保管してくれていましたし、いつも「もっと上を目指せ」と激励してくれていました。ご家族から、亡くなる前にも「片桐君、知事になればよいのにな」と話していたことを伝えてくれました。

そして「片桐さん、いつまでも主人のことを覚えてくれていてありがとう。今日、来てくれたことを主人はとても喜んでいると思います。ありがとう」と涙ぐんで言葉を伝えてくれました。悲しいけれども、とても良い時間を過ごすことができました。心からご冥福をお祈りしています。