活動報告・レポート
2025年7月12日(土)
ビジネス研修会で講師

約2か月前に「ビジネス研修会」の講師依頼をいただき、本日、講師を務めさせていただきました。この研修会は各月に開催しているもので、同会会長によると「片桐さんが講師として来てくれるので、楽しみにしていました。今日の参加者は普段より多いですよ」と話してくれました。私も講師依頼を受けた時から楽しみにしていた研修会です。

先月から今月にかけて県政報告会や講師を毎週一回行っていますが、テーマを「和歌山市が衰退してきた原因と将来に向けての施策」を中心に講演を行っています。一昨日、レジュメを作成する中で、話す項目を決めていきました。

今日の研修会で話した項目は次の通りです。

「ビジネス研修会」レジュメ

  1. 和歌山市衰退の歴史
  2. いま考えられる危機
    • 西防波堤用地の未活用
    • インフラのないコスモパーク加太
    • 公共事業の減少
    • 年間1万人の人口減少
  3. 将来に向けての施策
    • JR和歌山駅周辺再開発
    • 和歌山IR(統合型リゾート)

講義時間は約90分でしたが、レジュメに基づきながらも講義に即した話題を取り変えながら話を進めました。私の講義は話の内容が分かるようにレジュメを作成、配布しますが、ほとんどその通りに話すことはありません。参加してくれた皆さんの表情や頷く様子を元にしてより関心が高まるように話題を変えていきます。そのため配布した資料を読むことはまずありません。今日の講義の要旨は次の通りです。

和歌山市の衰退の歴史として、住友金属和歌山製鉄所の鹿島移転と沖出し中止、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの誘致の失敗、和歌山火力発電所計画の中止があり、それ以降の経済と雇用、そして人口にも大きく影響しています。仮に鹿島に移転しなければ、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンが和歌山市に出来ていたら、和歌山火力発電所が実現していたら、現在の和歌山市の姿は現在と全く違ったものになっていたと思います。

ビジネス研修会で講師

現在まで和歌山市が衰退している原因は、お金が循環していないこと尽きます。つまりこの三つが実現していたら経済規模と雇用が拡大し、人口も今のような減少はしていなかったので経済活動が維持でき、生活環境も維持されていたはずです。

衰退の原因はお金の循環が少ないこと。つまり企業の利益が低迷し、働く人の所得が増えていないこと。民間投資が少ないことから金融機関からの融資が減少しているので、和歌山市の経済を支えるだけのお金が循環していないことに尽きます。

結局、大型の民間投資を受け入れる以外に衰退を食い止める解はありません。逆に大型の民間投資を受け入れることが衰退に歯止めをかけ、将来の展望を拓くことになります。やるべきことは民間投資に行きつきます。これ以外の方法で和歌山市の衰退に歯止めをかける方法はありません。他の方法があれば教えて欲しいと思います。

また和歌山県の人口は毎年、約1万人減少しています。経済的に考えると、毎月所得のうち60パーセントから70パーセントが消費で残りの40パーセントから30パーセントが貯蓄に回ります。つまり毎年1万人の人が減少しているということは、1万人分の所得が消え、消費も減少していることになります。これだけ所得と消費が減少しているなら、経済規模は縮小するのは当たり前のことです。

繰り返しますが、民間投資を受け入れることと、給与を上げて消費を増やすこと以外に和歌山県経済を維持する方法はありません。

参考値として、和歌山県の県内GDPは約3兆7千億円で、毎年、それだけの付加価値を生み出していることになります。それに対して貯蓄額は約7兆円あります。GDPに対して貯蓄額は高いように思いますが、もしこの内10パーセントでも消費や投資に回れば、7千億円が市場に出回るので地域経済に効果があります。和歌山県日高沖で計画している洋上風力発電所の建設費は約5千億円、「和歌山IR」の投資額は約8千億円と推測されているのでそれに匹敵する規模になりますが、現実的に貯蓄の10パーセントが投資や消費に向かうことはありません。

とすれば、やはり巨額の民間投資に頼る以外にありませんから、ここでも解は一つです。

今、考えていない計画が突然実現することはありません。今実現している大型のものは5年、10年前に計画してきたものだけです。今、実現に向けて取り組んでいないものが5年先に実現することはありませんから、今、やれることをやることが県政の役割です。何の行動を起こすことなく「白紙」だとか「ゼロベース」と言っているようでは、和歌山県の明るい将来はありません。

結果はどうなるか分からないとしても「和歌山IR」の可能性が見えているのだから、行動を起こすことが和歌山県に必要な力です。みすみすチャンスを見逃すようであれば、県民である私たちの幸せを考えている県政ではありません。反対やつまずきがあっても、県民の皆さんの意見を聴くこと、問い掛けてみることをやるべきです。令和7年6月県議会一般質問で「和歌山IR」を取り上げた結果、議論を交わす雰囲気が出てきましたし、賛否を議論する土台をつくれたと思います。そして「和歌山IR」の質疑が外国メディアにも記事として取り上げられました。和歌山県が外国メディアに記事として取り上げられることは滅多にありませんから、これだけでも知名度は高まったと評価すべきことです。

とにかく統合型リゾートの認可枠はあと二つです。大阪の候補地では建設に着工していますし、東京都も秋に名乗りを上げることは必至です。そうすると残された枠は一つだけになります。立候補をしても認可を得られる保証はありませんが、行動することで結果を得られる可能性はあります。

何も行動しないで名乗りを上げなければ、可能性は永遠に閉ざされます。後になって「あの時やっていれば」と悔やむことは和歌山県の得意技です。もうそんなことは要りません。和歌山県の将来に大きな影響を与える賛成、反対はあると思いますが、せめて議論を交わし結論を出す行動ぐらいはすべきです。行動してできなかったことと、諦めてやらなかったことでは、和歌山県が将来に向かう力は全く違ったものになります。諦めて行動しないようでは今までと同じですから、衰退に向かっている現在の延長線に発展はありません。

和歌山市の歴史を振り返ると、今やるべきことは明確ですから、国に対して意思表示を行うことです。行動しないことで、和歌山県内に経済的な負の影響を及ぼすことはもうご免です。「和歌山IR」に挑戦の可能性がありますから、過去の失敗の経験に学び、やるという選択をしたいと考えています。

「和歌山IR」はやるか、やらないかの選択ではありません。やるか、それ以外の他の大型の投資を創り出すかの選択です。

講義を終えた後、質疑の時間を設けて皆さんと意見交換を行いましたが、その中の一つを記します。

「新日鐵和歌山製鐵所は撤退も視野に入れていると思います。和歌山製鐵所に新たな投資は行わない、全国で二番目に撤退する候補地として名前が挙がっているのが和歌山製鐵所だと聞いています」と意見がありました。和歌山市から和歌山製鐵所がなくなるとしたら、経済、雇用、人口など、和歌山市にとってとてつもない影響があります。和歌山市が置かれた経済事情を勘案して、将来の和歌山県の発展を考えることが県政です。決断できない県政であってはなりません。

皆様方には、この講義が和歌山県の将来を考えていただくきっかけになれば幸いで、秋にはこの課題が表面化すると思いますので、関心を持ち県政の動きを見て欲しいと思います。この課題を元に将来を考える時間は限られています。時期を逃すと実現の可能性も、この課題を議論する機会もなくなります。和歌山県の将来の発展のためにこれまでの歴史と失敗、可能性を考えてくれることをお願いして講義を終わります。ありがとうございます。